2018.06.26
【日替わりレビュー:火曜日】『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』せがわまさき, 山田風太郎
『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』
先日AbemaTVで劇場版『空の境界』一挙放送がありました。いやー最高っすね! モノの死を視る「直死の魔眼」を持つ両儀式、視覚に入った物体を曲げる「歪曲」浅上藤乃、魔術師の蒼崎橙子ら魅力的なキャラクターたち。
そこで今回は、異能力バトルの始祖ともいうべき山田風太郎先生の忍法帖シリーズ一作目『甲賀忍法帖』(1959年)を、せがわまさき先生がコミカライズした『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』を紹介します。
徳川幕府の世継ぎ争いのために、甲賀卍谷衆vs伊賀鍔隠れ衆で、壮絶な忍法合戦を繰り広げる本作。刀で斬られても弾力で吸収してしまう超太っちょ、痰を蜘蛛の糸のように操る小男、身体をナメクジのように縮められる暗殺者など、人間の身体能力を越えた異形の数々。
その自由な発想力は、50年以上経った今も色褪せることなく、空想の世界にどっぷり浸せてくれます。
朧の「破幻の瞳」は、見澄ますだけであらゆる忍術を見破ることのできる特異体質。両儀式の「直死の魔眼」に通じるルーツだと勝手ながら思っています。
薬師寺天膳の「不死身」、夜叉丸の「糸使い」、筑摩小四郎の「真空の刃」、如月左衛門の「変身」。異能力バトルで定番のアイディアも、ここが原点です!
全5巻。10名vs10名という大所帯のチーム戦ですが、展開が早くて読みやすく、スピーディに結末まで到達します。余韻の残るラストシーンは、1巻の冒頭に繋がっている美しい情緒で綴られていて、何度でも繰り返し読める傑作に仕上がっています。
©せがわまさき,山田風太郎/講談社