2018.07.14

【日替わりレビュー:土曜日】『焼肉店センゴク』覆面うさぎ

『焼肉店センゴク』

今夏7月3日深夜から関東で地上波放送がはじまったアニメ『焼肉店センゴク』
これはもともと2017年12月から今年2月にかけてコミックスマート社の「GANMA!」アプリで配信されたアニメであり、その原作となるのがこちら、「コミックGANMA!」にて2013年12月からWeb連載が続く同題の4コママンガ作品である。

主人公・大山ソウジが人生初のアルバイトをすべく面接を受けたのは、「センゴク」という名の焼肉屋さん。
「家が近かったので」というミもフタもない志望動機を素直に話して即採用された彼は、モジャモジャ髪にちなんで「モップ」とニックネームをつけられ、内気で口ベタな性格から接客に苦労しながらも真面目に仕事をこなし、ひとりの店員としてなじんでいく。

ビール樽を軽々持ち上げる怪力の巨漢でヒマあらば筋トレと昼寝にいそしむ店長。
先輩風を吹かせるも天然ドジっ子でお皿を割った枚数は他の追随を許さない、元気なムードメーカーのヤエ。
不愛想だが一番有能、だけど店長が大好きすぎて奇態をみせることもしばしばな最年少のアオイ。
周囲の人間がうっかりやらかして「けっさく」な状況に陥るのを眺めるのが趣味の最古参、へちま(本業は自動車整備士)。
やればできるがやる気なし、飲む食うサボるの好き放題に生きる中国人留学生の女性、リュウ。

これらアクの強い上司・先輩たちがおりなす会話のキャッチボールは愉快痛快、「くせものだが気のいい人たち」に囲まれるモップくんの、大変だけど恵まれた職場環境は大笑いと微笑ましさを同時に誘ってくる。

数あるお仕事マンガでも焼肉店は舞台としてユニークだが、折にふれて描き込まれる新人アルバイト心理は間口が広い。
仕事を始める前に「数時間だけ、数時間だけ」と自分に言い聞かせて緊張をおさえこもうとしたり、通勤中にお店のある方角から煙が上がっているのを見てつい、もしかしたら火事?→バイト休めるかも!? と悪いことを考えてしまう等々……職種が違っても「分かるわー」と言える人は多いだろう。

あるあるといえば、飲食店の仕事を続けてしみついた職業病が生じる描写もいいところを突いている。
コンビニに入って「いらっしゃいませ」と言われれば反射的に自分も「いらっしゃいませ」コールを復唱してしまう、同僚たちとファミレスに入ればついみんなして他店の接客術を観察してしまう、といったシチュエーションの“あー、ありそう”感……。

登場人物が突拍子もない言動やシチュエーションに突っ走るコメディを、現実味のある細かい描写がつないで親しみやすい日常感もキープするこの手筋、お仕事マンガとして腰がすわっており好ましい。

以下余談。
個人的にお気に入りのキャラクター(?)は、メニュー表の表紙を飾るためヤエさんが考案したマスコット「食べられた牛の亡霊ちゃん」。焼肉を食べている人間を見つけては忍び寄って「おいしい?」「それな ワシの身やねん」と声をかけてくるという設定がひどくて素晴らしい。
アニメ版ではコレがおまけコーナーを担当しており、芸人のつぶやきシロー氏が声を演じている。意外だが上手いキャスティングだ。

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miyamo

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