2018.09.21
【日替わりレビュー:金曜日】『ミントチョコレート』折笠まみ
『ミントチョコレート』
白泉社「花とゆめ」系の掲載作が、だんだんと花とゆめっぽくなくなりつつある=現実ベースの売れ線狙いな作品が増えている……みたいな話をどこかで耳にしたのですが、確かにこう、割と普通なバックグラウンドのヒロインが、恋愛色強めなお話を繰り広げるような作品、増えてきた気もします。
本作『ミントチョコレート』もそんな路線を汲む作品になるんじゃないかと思うのですが、これが面白い。こういう面白い作品が増えるのであれば、個人的には大歓迎。
今回ご紹介する『ミントチョコレート』は、白泉社が展開するマンガアプリ・マンガparkにて連載されている作品です。物語導入の文章で、全て語られてるのでそこを抜き出しましょう。
高一の終わり、母の再婚相手の息子だと紹介されたのは、私の好きな人でした──
というわけで、親の再婚によって好きな相手と兄妹になってしまうという、ひとつ屋根の下モノが好きな人であればご飯3杯はいけそうなこの設定。めくって1ページ目で心掴まれましたとも。
主人公の七海はごくごく普通の女子高生。地は明るく元気な女の子なのですが、親が離婚して母子家庭育ちということで、なんとなく周りから向けられる「かわいそう」という視線に、最近は辟易する日々を送っています。そんな中、そんなこと意にも介さずズケズケとモノを言うクラスメイト・京介に、なんとなく惹かれるように。
そこに突如舞い込んだ、親の再婚のお話。好きな人がひとつ屋根の下にいるというドキドキから、空回りしまくります。
一方の京介は成績優秀で、たぶん運動もできる(知らんけど)、もちろんイケメンという、パーフェクトヒューマン。しかしながら圧倒的に無愛想で、女子たちは憧れの気持ちを持ちつつも、遠巻きに見つめるだけという、近づきがたい存在として認知されています。
七海と一緒に暮らすことになっても全く動じておらず、色々意識してしまってグルグルしている七海からすると、そんな態度がムカつくし悲しいという。
で、実際のところなんですが、七海だけじゃなくて京介もめちゃめちゃ裏では意識しちゃってましたっていうオチ。七海が隙(好き)を見せると、それに乗じて京介がちょっかいをかけるのですが、思わせぶりな言葉だったり、壁ドンだハグだ寄りかかりだと、その行動はかなり大胆。
七海からすると無表情から突然迫られる感じになるので、ドキドキとともに戸惑いMAX。互いに素直に好きだと言える性格でもないので、時にちょっかいを出しながら、つかず離れずの距離感を保っていきます。
「こんなん絶対自分のこと好きですやん」って行動あるじゃないですか。互いに言い訳できないボーダーラインを余裕で踏み越えまくっているんですが、「好き」とか「付き合う」といった言葉が飛び出てこないがために、そのボーダーを軽々越えた領域で、好きだ嫌いだとゆらりふらり(一歩引いて冷静に見るとイチャイチャ)してるっていう。
この絶対安心な状況だからこそ得られる幸福感の素晴らしさよ。なので読んでてニヤニヤが止まらないっていう。なんかついついキスとかしちゃいそうなんですけど、そこもしないあたり、わかってます。というわけで、『ミントチョコレート』オススメです。
©折笠まみ/白泉社