2018.09.26
【日替わりレビュー:水曜日】『先輩がうざい後輩の話』しろまんた
『先輩がうざい後輩の話』
おっきな男とちっちゃな女の組み合わせって、胸キュン
舞台は一般企業。働く女性の五十嵐双葉(いがらし・ふたば)は、一生懸命働く、身長がミニマムな女性。彼女の先輩・武田晴海(たけだ・はるみ)は、巨体で筋肉質、さらに声がでかい。頭をなでてきたりとデリカシーにかける彼を、五十嵐はいつも「うざい」と感じている、らしい。
「私が飲み会で絡まれると割って入ってくるし」「私が酔いつぶれると家まで送っていくし」「私がミスしたとき一緒に謝りに来るし」
…ん? 恋愛に疎いので五十嵐本人も困惑しているようだが、彼女の言う「うざい」は、不器用すぎる好意の表れのようだ。
一向に近づかない、鈍い大人たちのラブコメディ。柔道を習っていた武田。かなり体育会系の思考で、どんな時でも後輩を優先する紳士っぷりを見せてくれる。
何も言わずに五十嵐がもめていた仕事の資料を処理してくれていた。五十嵐に近づいた痴漢を捕まえてくれた。何も言わずにプレゼントを準備してくれた。多少デリカシーがないのすらも「親しみやすい人柄」の一部に見えてくるくらいに、一挙手一投足見守ってくれるパーフェクトな男だ。
別の社員・桜井桃子(さくらい・とうこ)と話していた時の武田の発言が、この作品の恋愛の距離感をもろに出している。
桜井「武田先輩も双葉ちゃんのことよく見てますよね~」
武田「当たり前だろ! 五十嵐は大事な後輩だからな」
五十嵐の恋心は周りにはほぼバレバレ。だからこその桜井の煽りなのに、こう返されたらどうすればいいのか。五十嵐、影で聞いていて顔を覆ってしまう。嬉しくもあり辛くもありで複雑。
恋愛経験がなくてあたふたする五十嵐の鈍さと、大人の心の余裕がでかすぎる武田の鈍さは質が違う。五十嵐が報われるための、ドラマチックな展開があって欲しい気はする。でも、なあなあで一緒にいたらいつしか結婚してました、くらいのノリの「そばにいて当たり前」な距離感も見てみたい。
©しろまんた/一迅社