2018.10.02
【日替わりレビュー:火曜日】『やさしく!ぐーるぐる真紀』星里もちる
『やさしく!ぐーるぐる真紀』
10代の頃、自分の人格形成に影響を与えたマンガがあります。「月刊少年キャプテン」(徳間書店)に連載されていた星里もちる先生の一連の作品です。
『危険がウォーキング』は、誰もが子供の頃に苦しむコンプレックスをコメディに昇華した名作。ちょっと相手を傷つけて、自分も傷つきながら成長する多感な少女の思春期を描いた『わずかいっちょまえ』も後世に語り継ぐべきタイトルだと真剣に思います。
その後、星里もちる先生は青年誌に舞台を移して『りびんぐゲーム』が大ヒット。青年向けマンガをメインにして活躍されます。
そんな星里もちる先生が古巣の徳間書店の「月刊COMICリュウ」に帰還。少年向けに作風を戻して描かれたのがこちらの『やさしく!ぐーるぐる真紀』。
ぬいぐるみ愛に溢れた女子高生・小田島真紀。ある日、ぬいぐるみが突然凶暴化して真紀に襲い掛かる事件が発生! そこで怪しい青年に渡された不思議な腕時計。その腕時計を使うと、ぬいぐるみと一体化して凶暴化した「バケるみ」(化けたぬいぐるみ)を退治できるらしい。かくして真紀は、「やさしく」闘うことになるのだが……。
そう、このマンガには「優しい」という気持ちが流れています。
バケるみとの戦いでも、殴ったときの効果音が「はふーーーーん」です。「ドカッ」とか「バキッ」ではありません。ぬいぐるみを傷つけたくない真紀の優しい気持ちが拳に乗るからこそ、「はふーーーーん」なんです。
切った張ったの殺伐したアクションもいいですけど、40をすぎて辛い現実が多く見ていると、マンガにも癒やしを求めてしまいます。疲れたオッサンに効く、胃をいたわる豆腐料理のように心に染みてきます。
真紀のお母さんは家でも着ぐるみ姿で生活しています。そう、『危険がウォーキング』の牧野くん一家を想起させるセルフオマージュがここに! そこに気づくと、ラストの舞台が公園というのも『わずかいっちょまえ』を直感的に連想してしまいます。
『危険がウォーキング』はマンガ図書館Zにて無料で公開中です。
生まれ変われるなら、『やさしく!ぐーるぐる真紀』や『危険がウォーキング』のような世界に生まれ変わりたいです(真顔)。
©星里もちる/徳間書店