2018.11.07

【日替わりレビュー:水曜日】『レバガチャアーカイブ』カネコマサル, 鯨武長之介, SNK

『レバガチャアーカイブ』

ネオジオと一緒に歩んだ、中学二年生の恋と青春

1995年。クラスメイトの柏芽香織(かしわめ・かおり)が、冴えない中二男子・江陶貫敬(えとう・やすたか)に話しかけてきた。

「あのね…私 江陶君に大事な話しがあるの」

こんな事言われて気にならないわけがない。女子と話すとなって緊張しまくる江陶少年。顔を赤らめる少女柏芽。彼女の口から出たのは思いもしない言葉だった。

「江陶君ってネオジオに詳しいんだよね! 私に教えてほしいの ネオジオのゲームのこと!」

柏芽いわく、片想いの人がネオジオとSNKのファンだから、協力してほしい、とのこと。短いながら、恋愛終了である。

90年代のSNKゲームを題材に、中学生の恋愛模様を描くラブコメディ。スタート地点でいきなり失恋しているものの、柏芽が至ってポジティブにガンガン進むタイプのヒロインなので、作品の空気は至って明るい。

クラスの人気者の明るい女の子が気軽に声をかけに来てくれる、ただしお付き合いはできない、というシチュエーションは、非常に男子中学生ノスタルジックをくすぐってくる。こういう時は「女の子と付き合えるか否か」はすでに問題ではない。「一緒にゲームができる」だけで、思春期男子は浮足立つものだ。

柏芽が好きなのは、大学一年生のゲームセンターの店員・新塩歩陸(あらしお・あゆむ)。爽やか系イケメンで、とても人当たりがよく優しい。その上死ぬほどゲームがうまい。あまりにもよくできた青年な上に、憧れるようなプレイを繰り出すものだから、江陶もすっかり新塩の虜になる。

江陶はどう考えても貧乏くじを引いた状態。それにもかかわらず、柏芽の相棒として彼女をサポートし、新塩のことを好意的に見ている。モヤモヤがゼロとはいわないが、とても彼は楽しそう。それは3人の間に、SNK愛が、ネオジオ愛があるからだ。ゲームを愛する人たちが、心から同じゲームを楽しみつながっていくのは、恋愛と同じくらい心地いい。

彼は彼なりに幸せに青春している。「キング・オブ・ファイターズ」に魂を燃やしたり。柏芽が練習するためにネオジオハードを貸したり。新塩のスーパープレイを見てうっとりしたり。全編に渡って、彼は恋がかなわないと知った上で、笑顔で生き生きしている。

この作品ではSNKネタが濃厚に含まれている。「龍虎の拳」の藤堂は最初は必殺技が一つしかないなど、ゲーマーなら誰でも知っているようなネタから、「餓狼伝説3」の隠し演出にゲーマントが出てくるのはバトルが始まって30秒、など普通の人はまず知らないようなマニアックな知識までてんこ盛り。「ラルフとクラークが出てくるファミコン版」を街中探すだけで一話使うくらい、ディープにSNKを掘り下げている。

3人がSNKに夢中なように、作者たちが心からSNKが好きなのがよくわかる。読者側も90年代SNKに恋をした記憶が蘇ってくる。ぜひとも「ネオジオミニ」をいじりながら読んでほしい作品。なおこの3人の名前、ネオジオ絡みの当て字になっている。

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たまごまご

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