2018.11.06
【日替わりレビュー:火曜日】『怪物王女 ナイトメア』光永康則
『怪物王女 ナイトメア』
吸血鬼ドラキュラ・フランケンシュタイン・狼男。彼らを束ねる怪物の国の王子───といえば藤子不二雄Ⓐ先生の名作『怪物くん』。
そんな『怪物くん』フォーマットをなぞりながらも、独特の作家性で新たにユカイツーカイなプリンセスを描いたのが『怪物王女』です。
5年前にいったん終了したものの、現在『怪物王女 ナイトメア』が「月刊少年シリウス」にて連載されています。続編なのか、パラレルワールドなのかはいまだにボカしているので不明です。
ともあれ全員が記憶喪失の状態から、またあの王女たちの冒険がリスタートしています。『怪物王女 ナイトメア』も、前作同様の読み味が堪能できます。プライドが無限に高い吸血鬼の令裡。直情的な荒ぶる人狼のリザ。「ふが」しか言わない怪力のメイド幼女のフランドル。個性豊かな人物の描き方が、光永康則先生はとにかく上手だと感じます。
『怪物くん』にない要素として、主人公の少年・ヒロ君の存在が大きいと感じます。姫様にとっての血の戦士なんですけど、今回も姫の身を庇ってザクザク死んじゃいます。剣で突き刺さったり、掲載誌「月刊少年シリウス」の最新号ではエイリアンの幼虫に寄生されてお腹から突き破られたり。ヒロ君の災難ぶりには、今回も同情しかない。
幽霊屋敷や異界、宇宙人(?)のいる洞窟など、怪奇現象に巻き込まれた姫様一行が、姫の推理と知恵でホームズばりに謎を解く。ミステリー仕立ての構成もワクワクさせてくれます。
吸血鬼は流れる水を越えるのが苦手、みたいな古典要素もふんだんに使っています。ここまで上質な新感覚ゴシックホラー、めったに見られませんよ!
©光永康則/講談社