2018.11.26
【日替わりレビュー:月曜日】『憂鬱な朝』日高ショーコ
『憂鬱な朝』
10年越しのシリーズがついに完結です。BLのシリーズで8巻というのは昨今、とても貴重です。私は1巻目からずっと追いかけてきたシリーズですが、今からまとめ読みできる人には嫉妬しかありません。
時代もので、身分差・家の確執、親子、主従の愛憎などの萌ポイントがこれでもかというほど詰まった読み応え抜群の作品なので、未読の方は是非とも手に取ってみていただきたいと思います。これぞ商業BLの底力! ということで、完結したいま一押しのクラシカル・ロマンBLです。
父の死後、10歳という幼さで久世子爵家当主の座を継ぐことになった暁人。そして暁人には、家令兼教育係として、父の遺言で久世家の全権を委ねられた桂木というクールで切れ者の男がつき従います。社交界でも一目置かれる美貌と手腕を持つ桂木ですが、暁人には必要以上に冷徹な態度で接しています。
カップリングとしては、暁人×桂木で、主人×従者というものですが、見た目の上下関係と心理的な上下関係が一致しないアンバランスさがたまりません。
時代の荒波の中で久世家を守りぬき、また発展させることに心血を注ぐ男たちの権謀術数も見どころのひとつです。貴族らしく後ろ暗い秘密があったり、他家とのパワーバランスだったり、めまぐるしい時代の変化だったりと、家の舵取りだけでも大変な労力を払う必要があります。
そんな中、暁人は桂木の身も心も欲し、紆余曲折はありつつも、桂木も暁人に心を添わせていきます。くっついたり離れたり、裏切ったりお互いの心が見えなくなったりと、とにかく波乱万丈な二人の恋。
この最終巻では2年間の遠距離恋愛になります。技術を学びに英国に渡った暁人と、日本に残った桂木。「二年間は長すぎます」と本音をこぼしてしまった桂木がたまらなく愛しかったです……。
最終的には主従としてではなく、肩を並べて生きていきたいと願った暁人は、ここにきてついにその願いを現実のものとします。ふたりが歩んだ長い道のりをぜひ、8巻かけて辿ってみてください。
あとギシギシシーンの褌には、床がピカピカになるほど萌え転がれることも書き添えておきますね。お好きな方はぜひぜひどうぞです!
©日高ショーコ/徳間書店