2018.12.04
【日替わりレビュー:火曜日】『OMEGA TRIBE』玉井雪雄
『OMEGA TRIBE』
親による子殺し。その絶望により、謎のウイルス「WILL」と契約を交わす主人公・吾妻晴が、次世代の進化の覇権を目指す物語。平凡以下な引きこもりの少年が、変身を遂げて人類の存亡に直面するというダイナミックな大風呂敷。
人類の進化、超能力、クーデターといった突拍子もない運命に巻き込まれていく展開が、読み手を熱くする大作です。
当時、雑誌で読んでいた時は、次の展開が読めなさにワクワクしながら楽しんでいました。元暴走族のリーダーで、総理大臣を目指して国会議員になる梶秋一がとにかく好きで。17年後の今になって読み返しても、ガツンと脳に食らう衝撃はそのままです。
意思を持つウイルス「WILL」は、人間は二種類に分けられると語ります。
「快楽を求める脳」…芸術やスポーツなど、新しい快感を発動させること人、進化できる脳。
「楽を求める脳」…自分で考えるのを避けて、他人のシステムに乗っかって行動しない人、絶滅する脳。
(16話より)
根底に流れるのは、「この閉塞した現代、生き残れ!」という強烈なメッセージ。気持ちいいくらいの脳筋主義は、読み手に覇気を与えてくれます。主人公の晴が身体を鍛えてストリートで喧嘩を売りまくったと思えば、自信をなくしてまた引きこもろうとしたり。かといえばアメリカ大統領夫妻と謁見したり。
週刊連載特有の、いい意味でのドライブ感が作用して、先が読めないアップ&ダウンが病みつきになる名作マンガです。
©玉井雪雄/小学館