2018.12.11
【日替わりレビュー:火曜日】『化物語』西尾維新, 大暮維人
『化物語』
小説『化物語』シリーズの、韻を踏む言葉遊びの快感。アニメ版『化物語』のキャッチーなキャラクター。
その両者を、『エア・ギア』の大暮維人先生が再構築したのがコミカライズ版『化物語』です。
独特な彩色技法で描かれる小説の絵柄とも、丸みを帯びたアニメのキャラクターデザインとも違う、シャープな筆使いなんですよ。リアル寄りの、現実味を帯びた美しい線画には目を奪われます。
特に戦場ヶ原ひたぎの髪のさらさら感に命を削って描いている、本気度を感じます。蟹の怪異にびっしりと描かれている紋様なんかは、アニメを超えたキモさにビビります。
マンガ版ならではのアレンジも見事です。階段から足を滑らせた戦場ヶ原ひたぎが落下する、『化物語』の冒頭シーン。ここを大胆にもカットしています。
戦場ヶ原ひたぎの秘密をずっとボカしたまま物語が進む。そして別のシチュエーションで落下シーンを描くというフェイント。小説やアニメで展開を知っていても楽しめるナイス改変があちこちに見られます。
その落下シーンにおける、ひたぎのギュッと目をつむった表情の可愛らしさにも注目。無表情で刺々しさ全開のひたぎをさんざん描いてからのギャップ、上手いなーと。ひたぎを支える阿良々木暦のポーズも、一工夫加えられているんですよ。
ベテランマンガ家・大暮維人先生の巧みさに唸るばかりの名コミカライズに仕上がっています。
©大暮維人,西尾維新/講談社