2019.01.29
【日替わりレビュー:火曜日】『BEASTARS』板垣巴留
『BEASTARS』
今期アニメ「けものフレンズ2」が好評ですが、こっちのけものフレンズたちも心がざわつきます。『BEASTARS』が第二部に入っても面白すぎる件。以下、第一部を本当にザックリとまとめたあらすじ。
肉食獣と草食獣が共存する、動物の世界。名門校「チェリートン学園」に通うハイイロオオカミのレゴシは、仲の良かったアルパカの友人が、何者かに食殺された事件を解決すべく犯人を探します。
その食殺事件が解決。ボロアパートで一人暮らしを始めたレゴシは、新たな人間(動物)関係を築いていきます(勝手に第二部と命名)。学園にはいなかった海洋生物も新登場。同じアパートの住人であるアザラシのサグワンさん、キャラが立ちすぎていて最高です。
まず、レゴシを部屋に迎えると全裸になります。オス同士なら失礼にあたらないから裸でもOK理論。戸惑うレゴシでしたが、「価値観の押し付けも否定も良くない」と、サグワンさんの意思を尊重します。
今日日インターネットで、どれだけ価値観の押し付けが闘争を生んでいるのかと。人類みんなハイイロオオカミに負けてるぞと。目から鱗です。
もうひとり、アパートの住人である社会人女性のセブン(ヒツジ)との親交も味わい深い。会社の同僚に「ラムちゃん」とあだ名で呼ばれているセブン。当然、肉食獣からラム(肉)と呼ばれることは、蔑称に近いわけです。
散々会社でパワハラを受け続けてきたセブンは、諦めつつも反抗することなく、大人の対応で受け流そうとします。ところがレゴシが「セブン…ですけど、この人の名前。ラムじゃなくて」と助け舟に入るんです。
青臭いレゴシと、諦念のセブン。
相手を体格で黙らせるハイイロオオカミと、仕事を頑張っても認めてもらえなかったヒツジ。
子供と大人。
肉食獣と草食獣。
二重のレイヤーで登場人物を表現しているのが上手い。
また、セブンの同僚たちがレゴシに服従した証として、「耳がペタってた」ことを描写しています。動物の生態を描くことで説得力が増す、その演出が抜群。
『BEASTARS』の動物たちが会話して共に暮す社会というのは空想の世界です。にもかかわらず夢中になって楽しめるのは、各種族の生態のディティールが説得力を持たせているからではないでしょうか。
©板垣巴留/秋田書店