2019.02.03
【日替わりレビュー:日曜日】『13年後の君』餅田まか
『13年後の君』
13年前、交通事故にあって他界したものの、生まれ変わって新しい人生を歩んできた伏見新太。ある日、自身が通う中学校に新任の教師として水鳥川宇多子が赴任するのですが、彼女と出会った瞬間、前の人生の22年間の記憶を取り戻し、宇多子がかつての恋人であったことを思い出します。
すぐにでも、自分が恋人だった達臣の生まれ変わりであると真実を伝えたい新太ですが、自分の現在の年齢(年の差)や変わってしまった立場などを考え、愛する宇多子を困らせたくない一心で思いとどまります。
しかし彼女との会話の節々からは、生前の元自分への変わらぬ愛情を感じたり、年齢を重ねても当時と変わらない可愛らしさが見えてしまい、葛藤を感じながらも宇多子への想いをつのらせていって──、というのが大枠のあらすじ。
本作『13年後の君』は、作者の餅田まか先生が自身のpixivアカウントで掲載していた作品が、「ガンガンpixiv」で連載化されたもので、少しファンタジックな年の差ラブストーリーとなります。
うだうだしてねえで早く自分が元恋人だと伝えたら良いのに! って一瞬思いますが、実際数歳の差ならまだしも、35歳と13歳という22歳の差は確かに大きな壁。さすがに伝えたところで、その先お互い本当に幸せになれるのか……? という主人公の悩みはもっともです。
ただ、そうこうしている間にも、宇多子を好きだというイケメン社会人が現れたり、宇多子自身は達臣の死を引きずり新しく人を好きになることを恐れていることが判明したりと、どんどん新太の心に揺さぶりをかけてくる日々。この言いたくても言えないもどかしさによって、なんとも切ない展開が続いていきます。
それから本作の魅力はやはり、キャラクターたちの人物設計の妙。主人公とヒロインの二人もそれぞれ愛らしくて応援したくなるのですが、脇を固める登場人物たちもとってもステキなのです。
この人生での新太のお母さんは元気いっぱいで可愛らしいし、同級生の蜂谷優志郎は目つきが悪くて一見怖いけど喋ると普通でお花が大好き。前述した宇多子に恋するイケメン社会人の白岡英智もぱっと見シュッとして大人っぽいけど、好きな人を前にするとどうしたらいいか分からなくなるポンコツさん。
個性豊かで温もりに満ちた面々が物語を大いに盛り上げてくれ、おそらく今後は、新太のことを好きな同級生とかも出てくるのでは…なんて期待もしてしまいます。
全体的に終始、穏やかで優しい雰囲気が漂いながらも、しっかりと随所にトキメキを散りばめてくれている本作。ぜひ一度お手に取ってみて下さいね。
©餅田まか/スクウェア・エニックス