『愛は金なり』

人間界に家出してきた世間知らずの悪魔は、いきなり財布をスられ、風俗街でデリヘルの面接希望と間違われ、あっという間に無一文どころか正当かどうかも怪しい借金を背負わされてデリヘルでバイトすることになってしまいます。──さらっと冒頭部分を書いただけで悪魔くんの頭の悪さが際立ってしまった気がしますが、わりと事実そのままです。

そしてデリヘルのオーナーはなんと天使。……天使が風俗店のオーナーしながら、ちょっと気に入った悪魔に借金背負わせて囲い込むってなかなかですよね。神様もびっくりのクズです。受攻そろって所属する種族的に問題ありな感じの、凸凹カップリングなのです。

そう、今回の組み合わせは敵対する種族同士。

「ちょっとトラウマ持ちのクズ系天使 × 天然おバカ悪魔」、という字面から漂う、わかりやすいコメディ感が素晴らしいです。

シリアスチックな天使オーナーの生い立ちなどはあるのですが、基本はアホエロコメディ仕様となっております。悪魔のおバカな愛されキャラがたまらない可愛さです。ネコとタチの意味すら知らないまま、いつの間にか天使にいいように開発され、どんどんえっちな身体になっていきます。魔力を奪われて借金を負わされて飼い殺しにされているようなものなのですが、悲壮感は一切ありません。

天使さんも、いつの間にか手元に置いた悪魔にはまっていきます。人間とは寿命が違いすぎて深く関われないのですが、この悪魔は自分と同じ長い寿命があるという安心感も手伝ったのでしょう。どんどん手放しがたくなっていき、おバカ悪魔に迎えがきて借金を返されても諦めきれない気配が漂います。

最終的にはおバカ悪魔が、教育係のおまけつきで出戻ってきて一緒に暮らすことになります。１冊分のページを費やした最後の最後に、おバカ悪魔は自分の恋心を自覚するのです。──馬鹿すぎて本当に愛おしい悪魔でしたね……。

ベースはコメディで、エッチもしっかりたっぷり楽しめる素敵なBL作品です。表紙がちょっとSMっぽいですが中はそんなにですので、痛いのが苦手な方も安心して楽しめるかと思われます。天使の過去にちょっと切なくキュンとして、おバカ悪魔のかわいさにクスッと笑って、爽やかな気持ちで読了しましょう♪

©熊猫/笠倉出版社