2019.02.24
【日替わりレビュー:日曜日】『異世界のトイレで大をする。』ルーツ
『異世界のトイレで大をする。』
アニメ化もされた狂気のハイテンションテニスギャグマンガ『てーきゅう』の原作を手がけていた、ルーツ先生が新たに描く『異世界のトイレで大をする。』。「月刊ヤングチャンピオン烈」で連載中の異世界ファンタジー作品です。
お話としてはタイトルそのまんまで、異世界のトイレで大便をしていくってものなんですが……また異世界? とか下ネタなんじゃない? とか、キワモノなファーストインプレッションで敬遠される可能性もあるかもしれません。
でも、内容的には深い考察が張り巡らされたガチ作品であり、避けずにまずは手に取って頂きたいタイトルなんです。
主人公のヨータローこと今泉洋太郎は、異世界に飛ばされてきた高校生。ギギーとヌラエルという、現地で出会った亜人の少女たちと旅をする、冒険者です。
彼が人とちょっと違うのは、トイレに対して異常なまでの執着をもっているということ。『ダンジョン飯』のライオスが「モンスターを食べること」を探求するように、ヨータローはいついかなる時も快適なトイレについて考え、機会あればすぐさま大便をいたそうとする、一言でいうとヤバいやつです。
ただそのように考えているのは彼なりの理由があり、それは「人は一生のうち時間にして3年間をトイレの中で過ごす」と云われていることから、「トイレの時間を大切にしない人はバカ」というモットーを持っているからなんです。
確かに人生における心地よいトイレタイムは大切、というのは理解できるのですが、しかし彼の場合、1話目から、倒して死んだスライムを持ち帰っておしりを拭いてみるというぶっ飛びよう。砂漠やダンジョンなど、様々な環境においてもあの手この手を使って果敢に挑戦し、ある時は快楽を、またある時は失敗を体験し、妙な経験値をため込んでいきます。
また、用をたすときは基本はひとりなので、まるで『孤独のグルメ』の井之頭五郎のように、それぞれの環境やオシリをふく何某かに関して感想や豆知識を独白している様子も趣深いのですが、ここで紹介される内容がやけに博識で、かなりの調査に裏付けられたであろうことが見受けられます。
その上、幕間では「トイレの時間を大切にしない人はクソだ。」というトイレネタを扱ったミニコラムも展開。過去の偉人達のトイレ事情やどのように大の環境が発展してきたかといった歴史ネタを中心に、時には動物の大事情も紹介したりと、やはりルーツ先生が本作を描くに当たって、トイレに関して入念に調べられていることが分かります。……というより、もはやヨータローのごとくトイレへの並々ならない執着を感じるほど。
最初読み始める時は、トイレで用をたすという行為でお話がもつのか……? なんて半信半疑かもしれませんが、ページを進めるにつれて無限に広がるトイレトークに夢中になっていくはず。更には、しっかり練られたファンタジー要素や、エッジのきいたギャグセンスも小気味よく、色モノで終わってないところもポイント高いんですよね。
騙されたと思って、ぜひトイレに持ち込んでゆっくり読んで頂きたい、非常に読み応えがある作品です。
©ルーツ/秋田書店