2019.03.11
【マンガレビュー】『傾国の宦官』日野晶【国を巻き込んだ中華風ファンタジー純愛BL!】
『傾国の宦官』
中華風ファンタジーBLです!
皇帝を誑し込んで王朝を牛耳る美貌の宦官と、皇帝になるのを嫌がって隠遁していた現皇帝の弟が、お互いの正体を知らずに惹かれあって、さあ両想い! というタイミングで本来の身元が判明してしまうという超絶分かりやすい恋の障害があらわれるやつです。こういうド定番の安定展開に心置きなく身をゆだねて萌えるBL読書って、最高に幸せだと思います。
世直しの為に自分の実の兄を討ち取ることが本当に正しいのか決断しかねる泰山(攻)は、討つべき兄を誑かしている宦官本人と知らずに彼に出会って、いつの間にか好きになってしまいます。陽明と名乗った女装の男が、世を乱す宦官と知ってもどうしても殺したくありません。
一方の陽明も、惚れさせてから捨ててやろうと近づいた男に本気で惚れてしまい、しかもその男が自分の一族を陥れて殺した皇帝の一族であり、復讐の対象者であると知って苦しむことになります。惚れた男が、一族まとめて皆殺しにしてやると誓った連中の身内だったのです。それはショックに違いありません。
中華風の王朝物語といえば、基本的に革命が起これば負けた側の主なメンバーは清々しいほどまとめて皆殺しがセオリーです。しかし泰山はどうしても陽明を殺したくなくて、戦の最中に先陣切って王宮に乗り込んでしまいます。現皇帝は愛した宦官とあの世で夫婦になる! と脳内お花畑のまま弟の目の前で陽明をグサっとやってしまいます。戦争中です。戦争中にこの痴情の縺れとしか言いようのない、昼ドラも真っ青な修羅場が繰り広げられたのです。
最後まで影の薄かった彼らの臣下たちの心中を察するに余りある光景です。
最終的にはBL的剛腕で主要人物は誰も死なずに大団円となって幸せなカップリングが完成しますので、そこに至るまでのキャラの葛藤も苦しみも全部まとめてラストに至るための試練と思って、安心しながらドキドキハラハラと読み進められます。
どんなふうに過去の因縁や王朝の慣習をぶったぎってハッピーエンドにまとめ上げたのかは、ぜひ本編を読んで楽しんでくださいませ♪
©日野晶/リブレ出版