2019.03.13
【マンガレビュー】『うちの妹は顔真っ赤。~ゲームライフ365~』すおしろ【ゲームオタの妹の暴君っぷりが可愛いショートコメディ!】
『うちの妹は顔真っ赤。~ゲームライフ365~』
ゲームでガチ切れする妹はお好き?
ストレスを蓄積させるため、自分からわざわざやる行動とはなんでしょう。
答えはゲーム。
基本ゲームはクリアした時の爽快感が気持ちいいからやるもの。だがそのための、9割方のプレイ時間は、なにかしらのストレスを自主的に体験しているものだ。
兄の牛腸(ごちょう)いすず(22才)は、妹の牛腸しづる(14才)のことが大好きで仕方ない。おとなしくてすぐ緊張する気弱な兄に対し、妹は元気いっぱいのヘビーゲーマー。ゲームプレイ中は、失敗やミスで怒鳴り散らす。
いすず「はたから見た妹は正直ちょっとやばい…しかし俺にはそれが愛しくてたまらない…そう! いわゆるドン引き萌えである!!」
兄は少々Mっけがあるのではと感じるくらい、妹に振り回されることを好む。彼が慣れない仕事をするのも、潤沢な資金でゲームライフを妹に送らせてあげるため。妹は兄に、ゲームで駄目なところは容赦なく突っ込む。
協力プレイで兄が死んだ時、「こいつほんと役に立たない…!!」「君 死ぬ以外に何かした…?」とガチギレ。「おにいちゃん」とここでだけ呼ばないのが、彼女らしい。
ゲームプレイ中に感情を爆発する楽しさを、しづるを通じて描いた作品。本気で腹が立てて打ち込めるから、ゲームは「怒り」すらも楽しい。その時は楽しくないんだけど、トータルすると「がんばったー」という満足感になる。
カタルシスで大喜びするシーンもある。ただマンガ全体を見ると、しづるが怒っている場面のインパクトの方が強い。オンラインFPSで味方にキレて「noob(へたくそだな初心者かテメーの意味)だらけか!」とわめく。兄との格闘ゲームで勝てなくて本体の電源を切る。作中のキャラクターに苛立って罵倒する。
しづるがゲームをしながら顔を真っ赤にするのは、本気だからだ。兄はどうも、彼女が全力でのびのびと暴れ散らかすのが、愛しいようだ。
実際、「ゲームで怒っている=ゲームを全身全霊で楽しんでいる」のがしづるの全力全身表現から伝わってくる。
アクション、RPG、FPSの他、友人に教えてもらった乙女ゲー、パズルゲーなどもプレイしているしづる。家族で「人狼」なんかもやっている。どのゲームに対してもガチで挑む。真剣に怒るし、思いっきり笑うし、感情移入して泣き崩れる。日常生活では出せない感情も、ゲームをやっている最中なら許される(電源オフや、オンラインゲーム内マナー違反はだめだけど)。
しづるはゲーム中は暴君だが、兄のことは大好きだ。自分がとことん甘やかされているのもわかっているので、時には「ちょっとおにいちゃん過保護がすぎるよ!」と焦ることも。兄が落ち込んでいるのを見たら、励まそうと慌てもする。
兄のことが好きなしづるも、ゲームで顔を真っ赤にして怒鳴り散らすしづるも、どちらもしづるの本音だ。いすずはなかなか感情を出せない人間で、社会で人の気持ちを察することに激しいストレスを感じているらしい。そんな中、常に正直なしづるの存在は、大きな癒やしなんだろう。
変顔どころか、シューティングゲーム中に集中といらだちで鼻水がだらだらになるしづる。確かにドン引きではあるけれども、ここまで純粋だと可愛らしい。ゲームに怒って「二度とやらない」とやめたのに、気づいたらまたやってしまう経験、ゲーマーならあるはず。そんな楽しい「怒り」を思い出させてくれる作品だ。
©すおしろ/少年画報社