『ヒーローさんと元女幹部さん』

本日ご紹介するWebマンガ『ヒーローさんと元女幹部さん』は、タイトルのとおり特撮系ヒーローと悪の組織にいた元・女性幹部の関係性を題材にしたラブコメ作品だ。

最大のポイントは「ヒーローさん」も女性であること……そう、つまり「特撮×百合」の合体技なのである。おらワクワクしてきたぞ！

──異次元から襲来した悪の怪人組織「アンチノイド」と、その脅威に立ち向かう変身ヒーロー「ラピッドラビット」。両者の戦いは激しく拮抗し、人類社会は今のところなんとか滅亡を免れていた。

そんなある日。アンチノイドの妖艶なる幹部、ハチ型怪人ハニィ・トラップはついにラピッドラビットを打ちまかすことに成功、変身解除へ追い込むに至る。どれどれ、殺す前に素顔を見てやろう、と近づくと……そこにいたのは傷を負い息を乱しながらも凛々しい美しさにきらめく若い娘さん。

（め…めちゃくちゃタイプの子～！！！）

なんと悪の女幹部、正義のヒーロー女子に一発フォーリンラブ！ 惚れた弱みでどうしても殺すことができず退散した結果、敵前逃亡の責任を問われ組織をクビになり、あげく粛清対象として命を狙われる羽目に陥る。

しかし、これがむしろ幸運の分岐点。行き倒れになったハニィさんを助けて自宅へ運び込んだのは、あのラピッドラビット……本名・本城颯（ほんじょう はやて）だった。

「敵とか味方とか関係なく 私は困っている人がいるなら助けたい」「私が あなたを守ります」

なにこの天使！ めちゃくちゃ優しい！
恋に落ちた追い打ちで思いっきり情にほだされたハニィさん、颯のすすめを受け入れ、彼女の家に居候して人間社会で暮らすことにする。

（それってつまり…同棲じゃん…！ 同棲じゃん！！！）

というわけで、可愛くて優しいヒーローさん（女性）にメロメロな元女幹部さんが、ひとつ屋根の下でごはんを食べたりいっしょの布団で寝たりおでかけしたり怪人相手にバトルを手伝ったりと、ドキドキ共同生活を満喫する日々が幕開けた……というのが大筋となる。

ハニィさんの人間形態がビシッとスーツを着こなしたオトナな眼鏡美女なのも見逃せないツボで、絵ヅラ的には社会人百合の趣も同時に楽しめるマンガになっている。

それにしても、アレですな……。考えてみれば、ヒーロー物には女性キャラクター同士の連帯や深い情緒というのがいろいろと配置されてきたわけで。

東映の戦隊特撮でいうと『特捜戦隊デカレンジャー』の中で「恋人みたい」とまで形容されることのあったジャスミンとウメコ。『轟轟戦隊ボウケンジャー』の間宮菜月と西堀さくら。『烈車戦隊トッキュウジャー』のミオとカグラ。“ニンニンガールズ”こと『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の風花と霞。歴代戦隊女性メンバーが家庭をもった後年をフィーチャーした外伝「ヒーローママ☆リーグ」。ハリウッド版戦隊映画『パワーレンジャー』のイエローとピンク。

さらに特撮ファン女性の悩みと情熱を描いたマンガ原作『トクサツガガガ』ドラマ版で話題になった、仲村叶（小芝風花）と吉田さん（倉科カナ）の交流。　

また、特撮ヒーローの方法論を応用して“少女ヒーロー（戦隊）アニメ”の形に記念碑を立てたプリキュアシリーズにおける、元敵幹部の改心と仲間入り、などなど。

そう！ かねてより我々は特撮世界に百合の花咲くところを見続けてきたのだ！

だから『ヒーローさんと元女幹部さん』という作品がやっているのは、決してひねった変化球などではない。特撮ファンのなかで百合センサーをもつ諸氏が折々に「もっとダイレクトに描かれればいいのにな～」「付き合う子たちがいても別におかしくないよな～」と胸温めた気持ちの原液をそのまま抽出してみせた、むしろド直球なコンセプトといえるのだ！

本作は「コミック百合姫」系列Web媒体としてpixivコミック内で展開する「ゆりひめ＠ピクシブ」で2018年秋に連載開始、今年3月18日に初単行本が刊行されたばかりのフレッシュな新作だ。追いかけるにはちょうどいいタイミングだろう。

はたしてこの先、颯ちゃんのほうもハニィさんを意識するようになるのか？ なんだか人間社会になじみはじめている悪の組織サイドの百合カップルの動向やいかに？　と、今後の展開が楽しみである。

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©そめちめ/一迅社