2021.10.18
美しい絵と緻密な設定で魅せてくれるファンタジーBL。短命の戦巫女と、彼を慕う青年の想いの行方が気になりすぎるシリーズもの1巻目です。『夜明けの唄』ユノイチカ【おすすめ漫画】
『夜明けの唄』
ファンタジーBLです。
ユノイチカ先生の初コミックスですが、これが……1冊目? というクオリティに仕上がっており、しかも初コミックスにして巻数入りで発刊されるという扱い。久々に胸が熱くなるファンタジーBLシリーズがコミックスで出てまいりました。
絵も雰囲気があって綺麗なので読みやすいのではないでしょうか。
夜に黒い海からやってくる化け物を倒す戦巫女(男)と、彼を慕う少年の関係がお話のメインになります。
海からやってくる化け物を倒すことができるのは、髪が白く、額に花の模様が浮かび上がった者だけ。
彼らは外見が変化すると修道院に連れていかれ、化け物を倒すことが勤めとなります。
化け物と戦うと、指先から体が墨のように黒くなっていき、やがて亡くなります。彼らは総じて短命で、化け物の呪いを受けたように体も成長せず、ひたすら戦い続けて孤独に死んでいくのです。
エルヴァも他の戦巫女のように、全身に墨が広がってやがて死ぬ運命にありましたが、ある時から子犬のような少年・アルトが近くにいるようになると、墨の黒ずみがどんどん少なくなっていきました。最長の任期が8年という中、12年経ってもエルヴァは現役で戦い続けています。身体も少しは成長します。
一方、エルヴァに憧れ、慕い、傍にいるようになったアルトは少年から立派な青年になり、結婚も取りざたされる年齢になりました。しかしアルトは既に自分がエルヴァのことが好きだと自覚していました。何とかしてエルヴァを戦いの役目から解放したいと願い、できる範囲で動き始めます。
仕事と海の化け物のことを調べたいということでしばらくエルヴァの傍からアルトが離れることになり、そのわずかな間にエルヴァの墨は広がり始め、それによって、戦巫女の「呪い」がアルトによって抑えられていたことが決定的となりました。
エルヴァもいつしかアルトに惹かれていますが、寿命も立場も違いすぎるという理性が働いて、いずれ自分の元から離れていくものと己に言い聞かせるようにして一線を引こうとします。結局、1冊目では酒に酔ったアルトが勢いだけでキスをするところで終了。
BLとしてはまだ序盤といったところですが、これは来年あたりどえらいインパクトの作品になってくれるのではないかとワクワクしています。
恐らくアルトがいないと長くは生きられないエルヴァ。アルトの気持ちとエルヴァの気持ちが重なる時が来るのか。黒い海の化け物の謎は解けるのか。
BLとしてもファンタジーとしても続きが気になって仕方のない作品です。
©ユノイチカ/シュークリーム