2019.04.26

互いに一切触れていないのに、その光景はどこまでもエロティック『くちうつす』天沢アキ【おすすめ漫画】

『くちうつす』

天沢アキ先生の『くちうつす』が3巻で完結を迎えました。

前作『ラブリラン』がドラマ化して驚いたんですが、いやドラマ化したくなる気持ち、わかりますよ。だって面白いんだもん。それも、比較的少人数な人物構成で、一つ強烈な設定を放り込むだけという、シンプルな構成。映像化しやすいだろうし、伝わりやすいし。

口写す

さて、本作『くちうつす』ですが、「口移す」ではなく「口写す」から来てます。物語の主人公はプラトニックな純愛が作風の小説家・由夏。デビューでヒットを飛ばすも、その後伸び悩み、予定していた単行本化の話もご破談に。そんな中で飛び込んできたのは、「性愛小説」の依頼でした。

後がない崖っぷちの中、もうやるしかないと決意した矢先、不注意から利き手を怪我してしまいます。このままでは原稿が書けない……悩み落ち込む由夏でしたが、彼女が怪我した現場に偶然居合わせた歯科医・長谷川から、「口述筆記」を提案され……というストーリー。

口述筆記とは、小説の内容を作家が口で言い、それをパートナーが記録をするというもの。担当編集ならまだしも、顔見知り程度の歯科医を口述筆記のパートナーに据えるというのはなかなかぶっ飛んだ設定なんですが、この長谷川さん、実は父が小説家で、小説に関する素養が少なからずあるという背景があります。

割とドライな性格で、ただただ由夏の言うことを記録するのではなく、普通につまらなければズバズバと意見を言っちゃうという。

一方の由夏は、プラトニックな純愛を売りにしているだけあって、官能的な小説は完全な守備範囲外。処女というわけではないですが、どうにもそういった話題は苦手。それなのに、年頃の男性相手に、官能的な話を言って聞かせるわけですから、もう完全な「プレイ」ですよ。最初は遠慮して月並みな内容に終始していたのですが、長谷川に促されるようにして、段々と生々しく欲情的なストーリーを紡ぐようになっていきます。

これセックスですやん

互いに一切触れていないのに、その光景はどこまでもエロティックで、もうこれ完全にセックスですやんっていう。実際当人たちも、筆が乗る(この場合、口が乗るって言うんでしょうか)と、どんどんと扇情的になっていき、顔が紅潮し、体が熱く、息遣いが荒くなるという。いや、やっぱこれセックスですやんっていう。

異種格闘技的三角関係

さて、そんなプラトニック・セックスを突き詰めていっても良いのですが、それだけでは退屈です。元々『ラブリラン』でも奇妙な三角関係を描いた天沢アキ先生ですが、今回も良い三角関係が築かれます。

口述筆記を続ける長谷川と由夏の間に割って入るのが、長谷川の友人で、いかにも仕事できそうだけどチャラそうな安藤という男。興味本位で由夏にちょっかいをかけるうち、だんだんと本気になっていき、やがて恋人っぽい感じになるんですが、これがまたねじれた三角関係の様相を呈していくわけです。

明確に好意を明らかにしているのは安藤であり、由夏との仲も良い感じ。しかもキスだのなんだのしちゃうわけですが、「物理的な快感」「即物的な快感」が得られる関係とも言えます。

一方で、長谷川との口述筆記は継続。そちらはあくまでビジネスライクな関係ながら、口述筆記はさながら性行為的であり、実際の行為に勝るとも劣らない快感が得られるという。

こう、物理と魔法の対決みたいな、異種格闘技的な面白さがあるんですよね。それぞれ土俵が違いすぎるので、直接的に争うことすらできないけれど、バチバチに意識しあってるみたいな。

正直三角関係のバランスが絶妙すぎて、「どっちに転んでも、誰かしら傷つくやつじゃん。どうやって収めるんだろう。」と注目していたのですが、いやきっちり納得できる結末になりました。

中だるみ無し、短すぎず、かといって長すぎずすっきり3巻で気持ちよく読み切ることができました。官能的なところがメディアミックスへのハードルを高めていますが、いや『ラブリラン』より面白いんじゃないでしょうか。まだ読んだことない人は、まず1巻から、読んでみてくださいよ。

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