2019.04.29
尻フェチノンケの都会男 × 田舎の純朴ゲイ男子『トーキョースーパーダーリン』松吉アコ【おすすめ漫画】
『トーキョースーパーダーリン』
風俗系の女性絡みで地方に左遷されてきた銀行マン・一颯。
この一文でなんとなく察していただけるかと思いますが、とってもライトなクズです。悪人ではありません。よく都会にいそうなチャラ男っぽい攻です。あんまりスーパーダーリン感はないです。
当初、BL界におけるスパダリのイメージは、石油王とか財閥系企業の跡取り息子とか、とにかく浮世離れした金持ちだったんですが、バブルが崩壊して久しい今日この頃、ずいぶん庶民的なお金持ちでもスパダリ認定されるようになって来たような気がします。しかしそれでも、左遷されてきた風俗好きのサラリーマンがスパダリかと言われると首肯しづらいものがあります。
まったく悲壮感なく田舎暮らしを始める一颯は、爽やかに濃密な田舎の人間関係をこなしてそれなりにのんびりした暮らしを満喫していますが、ある日、ご近所さんである同年代の修平に尻フェチAVでのセルフプレイを目撃されてしまいます。
田舎の建物って防音性がほぼないですからね! 仕方ないですよね!! ちょっと恥ずかしい嗜好を言いふらされるのかと思いきやそんなこともなく、ほっとしたのもつかの間。今度は修平がゲイだという秘密を知ってしまいます。
修平は狭い社会で自分の性指向が知られるのを恐れて、東京に出ていきたいと考えていたんですね。田舎の情報網と噂はやばいですからごく当然の希望です。そんな修平の可愛い八重歯と好みのケツにムラッときた一颯は、己の欲望に忠実に純朴な田舎のゲイ青年を口説いて抱いてしまいます。そのまま身体の関係が続きますが、明確に付き合うとかそういう話はせず、婚活イベントでTVカメラと共にやってきた若い女性にふらっといきかけたりと、スパダリ感は皆無です。
え、大丈夫? まさかのタイトル詐欺? さすがにひどくないですか!? と思いながら読む羽目になると思うんですが、ご安心ください。冒頭から中盤、ほぼ終盤手前まではただのライトクズだった一颯ですが、最後の方でとっても軽いノリでスパダリ風を吹かせてくれます。札束は関係ない方面ですが、自分がゲイであることがばれることにずっと怯えていた修平をとっても頼もしく助けてくれます。
田舎で致命的な噂にテンパって絶望していた修平にとって、堂々と「修平は俺の嫁&家は俺が継ます」宣言してくれた男はスパダリに決まってますからね! そう、一颯はマネー系スパダリではなく、メンタル特化型スパダリだったんですね。しかも本人に自覚がないタイプです。
田舎ののんびりした雰囲気の中で紡がれるハートフルBL。尻フェチノンケ男を無自覚に落とした修平が一番強かったというお話でした。肌色シーンもばっちりしっかりの、これから夏を迎える季節にはピッタリの作品です。
©松吉アコ/竹書房