『プ女と野獣 JKが悪役レスラーに恋した話』

少女漫画も多様化が進んでいて、王道からニッチ狙いの変わり種まで様々あるのですが、「確かに、これはなかったな…。」となったのが、こちら『プ女と野獣』。”プ女”ってのは、プロレスが好きな女子のことを指します。プ女が好きなものといえば、そう、もちろんプロレスラーでございます。

最近だと声優の三森すずこさんがプロレスラーのオカダカズチカさんと結婚したり、デートにプロレス観戦が流行っていると耳にしたり、なにげに人気があるジャンルですが、少女漫画ではあまり見たことがないような……。そもそもプロレスラーって、ストーリー上接点を生み出すのが難しいですからね。本作の場合どうしたかというと、Twitter＆出待ちです。ストレート。シンプルイズベストですよ。

主人公の百花はプロレス好きの女子高生。中でもお気に入りの選手は、男性からの人気が圧倒的な悪役レスラーの久我。Twitterでいつも応援リプライを送っていたのですが、久我も珍しい女子ファンということで、百花のことを気にかけていました。ある日試合の応援に行った百花は、試合後に彼を出待ちし、念願の対面を果たします。

その後、トークショーに行ったり、Twiterで相互フォローになってDMのやりとりをしたりと、距離は急接近。順調すぎるほどに仲を深める2人でしたが、百花が女子高生であることを知り、久我はさすがにたじろいで……というストーリー。

読んでいても、やりとりはTwitterや電話メインで、プロレスに絡めたイベントはほどほどと、ストーリー的に相手役がプロレスラーである必要性ってぶっちゃけそんなに感じないんですけれども、いわゆる「それなりに有名な人との恋愛」という枠組みでの面白さがある作品と言えるでしょう。

生活領域が全く被っていない2人ですから、そう簡単に会えるものでもありません。いざ知り合っても、直接会うのではなく、SNSでのやりとりが結構な量を占めているのが結構面白いです。既読スルーやリプライの有無とか、そういうところで愛を図るところが実に現代的。

で、そんなチマチマした画面を見つめ、ドキドキ悶々とするガタイのいいレスラーという構図がまたギャップ萌えを生み出すわけですよ。タイトルに『プ女と野獣 -JKが悪役レスラーに恋した話-』ってあるんですけれども、印象的には全然”野獣”でもなければ、“悪役レスラーがJKに恋した話”って感じの愛らしさがあります。

「会えない時間が愛を育てる」ではないですが、2人とも相手のことを考えすぎるがために、会わなくても思考は巡り、物語的には進んじゃう。1巻終わるところで結構なところまで話が進むんですけれども、冷静に考えると「あれ、実際に会ってる回数めちゃ少なくね…？ 大丈夫…？」ってなります。

でもいいんですよ、多少ストーリーが荒くても、恋とプロレスって勢いと流れが大事でしょう？ ピュアでちょっと面倒くさい2人の恋の試合を、一緒に観戦しませんか？

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©安曇ゆうひ/講談社