『この恋は深見くんのプランにはない。』

ボーイ・ミーツ・ガールって素晴らしいですよね。夢とトキメキがそこにあるので、余計なものなど何もなく、ただただ幸せな気分に浸れます。さて、ここ最近でボーイ・ミーツ・ガールでことさら印象に残っているのが、ひのなつ海先生の『あかいろ交差点』。

誰とも仲良くなれる人懐っこい男の子が、赤い糸が見えてしまうというツンツンな女の子と出会うというお話なんですけれども、これがなんというか、良い（語彙が貧困になるぐらい良い）。日替わりレビューで以前ご紹介したので、お時間あればどうぞ……

さて、そのひのなつ海先生が新たに送り出してきたのが本作『この恋は深見くんのプランにはない。』です。電子書籍系の「comicPOOL」から、4コマ系の「まんがタイムスペシャル」へと舞台を移したものの、それでもなおボーイ・ミーツ・ガールです。素晴らしい。

物語の主人公はタイトルにもなっている深見くん。プラン云々言うてますが、『人生手帳』なるものに書いた人生設計を実現するため、毎日分単位で計画・行動しているという、ちょっとヤバめな男子です。

なかなかのイケメンで女子からの注目度も高いのですが、そんな厄介な性格ゆえに、告白されても速攻でふられるという日々を過ごしています。

そんな彼が出会ってしまうのが、校内で猫を探す不思議系少女・日暮秋桜。ラブコメ的にはなかなか古風な出会い方で、出会い頭にぶつかって、まさかのキス。気にする深見くんをよそに、秋桜はまったく気にしておらず、動物に夢中。驚くほど自由で、全く話が通じない、人間よりも動物好きな、深見くんの理想とするところと真反対にいるような彼女に、最初はイラつくも、徐々に興味が惹かれていき……というお話。

なんでもプラン通りに事を運びたい男の子が、超絶アンコントローラブルな自由奔放な女の子と出会い、放っておけば良いものの、ついつい首を突っ込んで振り回されるという展開。振り回されれば振り回されるほど、彼女のことが気になっちゃうあたり、意外とMっ気あるのかもしれません。

一方の秋桜も、最初こそ深見くんを認知すらしていなかったものの、自分に積極的に関わってくる奇特な人ということで、だんだんと特別な人として見るようになっていきます（しかしその感情は恋とは違うような……）。

どちらも厄介な性格の持ち主ではあるのですが、深見くんの方が圧倒的に常識人であり、人間的なんですよね。秋桜の方が浮世離れしたような性格なので、その対比から深見くんが普通の人に見えてしまう。それが良いのか悪いのかは置いておいて、色モノキャラながら自己投影対象としての役回りもしっかりこなせる、きちんとした主人公という感じがあります。

掲載誌が4コマ系のまんがタイムスペシャルだからなのか、恋に直結しないようなほのぼのエピソードもちょいちょい挟み込まれ、比較的ゆっくりと関係が深まっていきます。オチはつけるけれども、友達との絡みで、恋の進展には影響しない…みたいな。

一方で、巻の最後には一気に進展が見られるようなドキドキなラブイベントも盛り込まれるなど、4コマテイストを上手くミックスしつつの、緩急の利いた作品に仕上がっています。

”恋”までいくにはもう少し時間がかかりそうですが、今後どんな計画外な出来事が起き、気持ちが深まっていくのか、今から楽しみです。

©ひのなつ海/芳文社