2019.07.03

コールドスリープで若さを保ちながら活動するアイドルの姿を描いたSFヒューマンドラマ!『絶対零度アイドル』ハナツカシオリ【おすすめ漫画】

『絶対零度アイドル』

彼女たちは命を削って、アイドルとしての賞味期限を長くする

少女が大人になる前の一瞬は、儚くて美しい。だからこそ、アイドルは人間の心を掴んで離さない。

同時にこの感覚は、時を経ていけばアイドルの賞味期限が来てしまう、という現実をも突きつけてくる。一瞬だから輝くとはいえ、収束して大人になっていく時間は、夢にあふれる少女たちには残酷すぎる。

人気グループ「ブライアローズ」は、冷凍アイドル。アイドルの活動時は普通に動いているが、それ以外の時はコールドスリープに入る。こうすることにより、歳を取るのが遅くなり、通常より長く、若く美しい姿を保つことができる

メンバーはコールドスリープについて、とてもポジティブな見方をしている。

すず音「アイドルの賞味期限って知ってます? 短いんですよ だいたい25歳までって言われてます 10年ちょっとしかできないんです でもね 私たちは1年の2/3眠っているので……3倍長くアイドルできるんですよ!」

究極の美少女を求める世間の「アイドル像」の消費と、アイドルとしての青春を送るため全てをかけて頑張る女の子たち。そこにどうしても生まれる加齢と成熟の問題を、科学の力で解決しようとするSF作品。

ブライアローズの子たちは常にはつらつとしており、コールドスリープアイドルの活動が、自分たちにとって正しいと信じて疑わない。特にリーダーのすず音は、今アイドルを続けられる状況をとても大切にしており、できることならなんでもしようと、「普通じゃ考えられない」ほどの努力をしてきた。

とはいえメンバーの中から、不安を持つ子も当然出てくる。ある少女は加齢恐怖症になっていた。起きている時はどんどん歳を取る。冷凍されていないと心配で仕方ない、という冷凍依存。彼女はコールドスリープをやめる、という決断を取った。

一巻ではまだすず音が強力にポジティブなため、ブライアローズの活動は華やかで美しく、彼女たちの頑張りも応援できる、ように見える。しかしコールドスリープは若い期間を延ばしはするものの、寿命は短くしてしまう。彼女たちはアイドルの活動期間を伸ばすために、命のろうそくを削っているのだ。

コールドスリープ反対派も世間には数多くいるようだ。現段階では、命を摩耗するブライアローズが正しいのか、異議を唱える人が正しいのか、全くわからない状態だ。

ファンの前に立ち、全力でパフォーマンスを終え、笑顔で見つめ合う5人のアイドル。この笑顔、素直に喜んでいいんだろうか。彼女たちを狙う謀略も含め、目が離せない作品だ。

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たまごまご

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