2019.07.10

小学4年生、マセた少女の小さな恋のものがたり『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』ゆずチリ【おすすめ漫画】

『姫乃ちゃんに恋はまだ早い』

小学4年生、マセた少女の小さな恋のものがたり

小学校中学年から高学年にかけて、女子の成長が一気に男子を追い抜く時期がある。身体も精神も急激に成長する、マセてやらかしちゃう子供時代を追体験できるのが、この作品だ。

小学4年生の相川姫乃(あいかわ・ひめの)。彼女は同じクラスの隣の席の男子、オージこと堂本逢司(どうもと・おうじ)に恋愛中。その影響もあって、背伸びして「大人」になろうとあれこれしでかす。もっとも知識はまだまだ子供なので、空回りの連続。

オージのことを「カレ」呼ばわりしてみたり、子供にはありえないセクシー水着に興味を持ったり、かっこつけてスムージーを買ってがっかりしたり。押しが猛烈に強い彼女、かなり強引にオージに近付こうとする。その割に照れもあるから、はっきり言うことはできていない。

オージはそんな恋愛の微細な感覚が全くわからない。だから気が強い姫乃のことが、ただひたすらに怖い。姫乃の、恋になる手前の一人相撲が楽しい作品だ。

この作品は小学生男女の距離感の表現が非常に巧み。いわゆる「ちょっと男子ー!」現象。男子と女子の間に、見えない溝ができ、同じ教室の中で距離を離してしまう感覚。女子は校則を破る男子に対して嫌気がさすし、男子は真面目な女子をおちょくってしまうので、ピリピリしてしまう。

姫乃は女子の筆頭のような子だ。彼女はルールに対してとても実直で、規律を乱す男子への怒りが非常に強い。だから男子から姫乃は「うぜー」という扱いになってしまいがち。

特別目立つわけでもない男子のオージ。彼に姫乃が惚れた理由は、はっきりとは描かれていない。しかしこの男女間の空気を念頭に入れつつ2人の学校生活を見れば、理解できるところはたくさんある。

オージは小学4年生社会の男女の壁をあまり気にしない少年だ。姫乃が怖いのはただ単に押しが強いすぎるのと声が大きいからで、他の男子と違って「女子だから」と言う理由で敬遠することは一切ない。

彼は自分が楽しいことを優先やろうとする、年相応の子供。しかし、周囲の人間に対するアンテナがちょっとだけ高く、さりげないフォローができる少年だ。

例えば姫乃がグリーンピースを食べられず困っている時。彼は気持ちを察して、姫乃に協力の手を差し伸べる。ここで「食べてあげる」ではなく「うらやましいなー」と言って下手に出ることで、姫乃のプライドを守っている。好き嫌いの内容は子供っぽいけど、これは立派なエスコートだ。

生活係の会議で姫乃が発言した時、他のクラスの係の子供は彼女のちょっと滑稽な発言を笑ってしまった。オージは顔を真赤にしている姫乃を見て、「ふざけてはいないよね」「真面目なんだね姫乃ちゃんって」と、彼女に対してだけ、そっと話しかける。アドバイスではなく、彼女の言えない気持ちを受け止める姿勢だ。

これらだけでもグッとくる部分があるのに、18話肝試し大会の彼の行動は、吊り橋効果どころじゃないときめきにあふれている。幼稚なやりとりではあるんだけれども、おそらく一生モノの思い出になりそうな出来事なので、ぜひ読んでほしい。

姫乃のかわいさ目当てに読み始めたら、オージに恋する彼女にすっかり共感してしまう、小さな恋のものがたり。あまりにもこの幼い子どもたちのドキドキが心地よすぎるので、永遠に小学生のままこの世界が続いてほしいと、つい感じてしまう。

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