2019.07.26
普通とはひと味もふた味も違う、国民的アイドルと地味子の前途多難な恋!『君がトクベツ』幸田もも子【おすすめ漫画】
『君がトクベツ』
地味な女の子が芸能人と恋するジャンルってのが最近流行ってるんですかね? つい先日『推しが我が家にやってきた!』をご紹介したばっかなんですが、ここにも一人、国民的アイドルと出会ってしまった地味子がひとり……。
お家にアイドルがやってきた
過去のトラウマから、世のイケメンたちを呪う陰キャJK・若梅さほ子。いつもの通り、家の定食屋を手伝っていたところ、ふらりとやってきたのは国民的アイドル・桐ヶ谷皇太。
驚くほど優しく接してくれる皇太に、さほ子は思わず暴言を吐いてしまうものの、その後も皇太は足繁く店やってきては、ファンになってもらおうとアレコレ画策します。
警戒感MAXだったさほ子でしたが、彼の優しさにどんどん惹かれていってしまい……というストーリー。
新境地を感じさせるヒーロー
幸田もも子先生作品というと、『センセイ君主』も『ヒロイン失格』も、メンズたちが誰もひとクセふたクセあるキャラクターというイメージがありますが、本作のヒーロー・桐ヶ谷皇太はそれらとは一線を画する、圧倒的に光属性な男の子。
光というのは、その人を惹きつけるカリスマ性ってのもありますが、何より性格が抜群に良いんですよ。誰に対しても分け隔てなく接するし、仕事は手を抜かないし、ファンサービスだっていつだって全力。
それをビジネスとしてストイックにこなしているのではなく、ただただ素直に心から行動しているという。とにかく癖が無くて柔らかい印象。聖人君子。尊い。
ヒロインは幸田もも子ヒロイン的
一方のヒロイン・さほ子は、陰キャということで属性的には幸田もも子先生らしからぬヒロイン。おとなしい慎重派かと思いきや、テンパリ気味で勢いのままに行動しちゃう面があったりと、実際に物語が動き出すと思いのほか突っ走り系で、結果的に幸田もも子先生的ヒロイン像を踏襲している、安心感あるキャラクターとなっております。
さほ子がイケメンを嫌うようになったのは、過去にイケメンに手ひどくフラれたという過去があるからなんですが、逆に言えばそれが癒やされてしまえば軽く方針転換しちゃうそうな、チョロそうな匂いが序盤からプンプンしております。
そこに圧倒的光属性な国民的アイドルが、まるで友達かというような距離感で「ぼくをもっと知ってよ!ファンになってよ!」と接してくるわけですから、序盤からガンガン心崩されまくります。
必死に「違う違う。そんなんじゃない。」と念じて自分の気持ちに抗っているのですが、まるで太刀打ちできない様子が面白いし、チョロかわいい。
こんなにチョロくて大丈夫か
あまりにチョロいので、「展開めっちゃ早くね……?」と不安になったりもするのですが、仮に恋に落ちちゃったとしても、そこからが大変。まず心はとっくに落ちていても、ちっぽけなプライドがそれを認めることを許さないし、仮に認められたとしても、相手は身分違いすぎる国民的アイドルです。
毎日のように店に通ってくれて、言葉を交わす関係なのでついつい忘れてしまいがちですが、ちょっと頑張ったからって、どうにかなる相手ではありません。
アイドルに心救われたものの、それが行き過ぎてアイドルに心苦しめられるようになるという、普通とはひと味もふた味も違う、前途多難な地味子の恋。その行方やいかに……。
©幸田もも子/集英社