2019.08.23

海神の伝承が残る閉鎖的な離島を舞台に繰り広げられる、三角関係のラブロマンス!『海神の花嫁』小純月子【おすすめ漫画】

『海神の花嫁』

小純月子先生による『海神の花嫁』の第1巻が発売になりました。まずはあらすじからどうぞ…。

“海神が造ったと言われる美しい島・真栄島。この小さな島で生まれ育った双子の姉妹・稔と凪、そして海神の血を引くという高良家の次期当主・朝和。誰からも愛される美しい稔の陰で、孤独な凪と次期当主として過酷な日々を送る朝和は、密かに惹かれあうようになる。しかし、高良家の当主は島で最も美しい乙女を「海神の巫女」として娶ることが決められていて……?”

ファンタジーっぽいタイトルと表紙ですが、ファンタジーではありません。海神の伝承が残る閉鎖的な離島を舞台に繰り広げられる、ラブロマンスでございます。

物語の主人公は、島で生まれ育った。綺麗で女の子らしい双子の姉・とはうって変わって、凪は虫や植物など島の自然にばかり興味がある活発な女の子です。

この島は、海神の血を引くと言われる有力者・高良家が絶大な権力を誇っており、凪はその後継者である朝和と、幼いころから共に育ち、互いにいつしか好意を寄せあうようになります。しかし結婚は自由意志ではなく、高良家の人間によって、同世代の女性の中からふさわしい女子が選ばれるというもの。

中学を卒業した時に選ばれたのは、凪ではなく双子の姉の稔。稔は高良家に嫁ぐための生活をはじめ、一方の凪は大学で自然を研究したいという夢を追いかけ、全寮制の高校に入学し、島を離れます。

こうして互いに別々の道を進み始めた二人。母との確執により、本格的に跡目争いに巻き込まれる朝和に、慣れない生活にストレスを溜めていく稔、そして、大学での研究のために久々に島に戻り、朝和と再会する凪。それまで止まっていた3人の運命が、再会をきっかけに大きく動き始めます。

主人公は凪になるのですが、姉の稔も、幼馴染で高良家の次期当主である朝和もそれぞれに苦悩を抱えており、三者三様に理解・同情が出来てしまう境遇であるのが心憎いところ。

朝和は凪への想いを持ちつつも、古の因習に抗うことはできず、また凪の夢を尊重したいとの考えから動くに動けず、見ていてもどかしい。

稔も凪の夢を尊重する優しさがあり、また朝和の気持ちが自分に全く向いていないことに気づきつつも、それでも健気に尽くす姿がいじらしくて胸がズキズキします。

凪は凪で、朝和への想いと夢との狭間で揺れる姿がそりゃあもう切ない。誰も得してないし、誰も勝ってないから、辛いし切ないんです、この作品。

1巻はそうした心の枷になりそうな出来事を積み重ねて、着々と舞台を整えたという感じ。島の風習も独特なものですが、丁寧に説明をするので、さほど違和感なくスッと頭に入ってきます。

そして後半で満を持して3人が再会。ここで稔が一気に闇堕ちしそうな気配がするところで終わりと、作者さんにとって、これが長期連載初めてとは思えないほど周到な、「わかってる」切り方。

純粋な悪を作らない構図といい、辛さ・切なさ・やるせなさが三拍子揃っているような絶妙な関係性に加え、ダイナミックだけれど無理のない物語展開で、めちゃめちゃ惹きつけられます。こういうドロドロとしたメロドラマは「プチコミ(姉プチ)」という掲載誌にも実にマッチしそうで、今から続きがめちゃめちゃ楽しみ。

思わぬところから良作が現れたという感覚で、まだ知らないという方は是非ともチェックをしてみてもらいたいところです。

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