2019.08.26
夏の終わりに読むのにピッタリ、ミステリ仕立てでストーリーが進行する「四角関係」BL!『真夏のサイレン』櫻川なろ【おすすめ漫画】
『真夏のサイレン』
「オレを殺したのは誰だ──」
およそBLとは思えないシリアスなオビのアオリです。しかもカップル2人がセットで表紙にいることが多いこのジャンルにおいて、異色のピンイラスト。これ、よくわかってない店員さんだとBLコーナーに並べ損ねるかもしれませんね……。それくらい、BL要素を抑えた表紙になっています。
ストリーとしては、夏の終わりに読むのにピッタリなミステリ仕立て4角関係BLです。
高校生の時、優弥は、同級生の春海、遼、崇文の男4人で遊びに行ったキャンプ場で、「ここにいる誰かにこっそり告白する」と宣言して、告白したかどうかも定かではない状況のまま吊り橋から転落して死んでしまいます。
事故として処理されたこの件は、残された3人を疑心暗鬼に。告白された誰かが受け入れずに衝動的にやってしまったのでは……?
しかし誰も直接それを確認することもなく、10年が経過します。冒頭で高校生ものと思わせておきながら、数ページ後にはみんな社会人です! 同窓会を機に集まった3人は、これまで心の奥底にしまいこんでいたあの時の疑心暗鬼を吐きだしあいます。
物語は、現在と過去が交互に出てくるスタイルで進んでいきます。
4人がどうやって出会ったか、どんなふうに友人関係になっていったのか、誰が誰を好きで、告白するとかしないとか、するときは一緒にとか、そんな話です。
仲良し4人組のように見えていましたが、実は本気で好きなのにそれを隠したままセフレ関係になっていたり、好きな人が誰なのかが勘違いされていたり、4人もいると関係性もなかなか複雑です。とにかく彼らの関係性の内容が濃すぎます。
高校生のメンタルが心配になるレベルで拗らせているので、吊り橋から落ちてひとり死んでもおかしくないかもしれない……という気分になってきます。
互いの感情が複雑に絡み合ってもつれて、ちぎれて、ほどけて、また結びなおされて……という爽やかだけでは済まない青春のその爪痕と、この先も続く彼らの人生。
トリック的なミステリというよりは感情の迷宮という感じでしょうか。
10年ぶりに集まって話し合うことによって真相が明らかになり、さらに伏せられていた事実も明かされて、幼馴染4人の物語は爽やかに終わりを迎えることになります。せっかくのミステリ仕立てなので、細かいネタばバレは伏せたいと思います。ぜひ読んで結末を楽しんでください♪
©櫻川なろ/KADOKAWA