2019.09.02
恋と成長が同時進行する、青春ド真ん中のバンドものBL!『ギヴン』キヅナツキ【おすすめ漫画】
『ギヴン』
奥まで刺さって、ぬける気がしない。真冬の声は、狂気で凶器だ。
TVアニメ化もして絶好調のタイトルです。1巻で完結することが多い昨今のBL作品ですが、本作はシリーズ化しています。構成も、長期戦を見据えた組み立てになっています。現在5巻まで発行されていますが、ここでは1巻をご紹介したいと思います。
高校生が主人公のバンドものです。青春の香りが漂う設定ですね。BLなのでもちろん恋愛要素は絡んでくるのですが、この作品の場合、先に才能に無自覚に惚れるパターンでした。
主人公の上ノ山は、好きだったはずのギターや、面白かったはずのバスケも、なんとなく最初の情熱が消えてしまった気がして夢中になれない日々を過ごしていたある日、校内で壊れたギターを抱えた真冬に出会います。
昼寝場所が被っただけのファーストコンタクトでしたが、ギターの弦を修理したあと、ギターを教えてくれと懐かれてしまいます。
どうにか逃れようとしたのですが、それも、真冬の頭の中にあるという歌を聴くまででした。なんとなくくすんだような日々を、漫然と過ごしていた上ノ山を揺さぶるような真冬の歌。
この歌を聞いた時を境に、上ノ山は追われる側から追う側に変わります。
自分が所属しているバンドに勧誘して断られたり、周りから真冬は男と付き合っていてその相手が自殺したと聞かされたり、入ってくる情報でキャパオーバー気味になってしまいます。衝動のままに真冬の歌を曲に起こして、真冬の過去のことは考えないようにしていましたが、当の真冬からその片鱗のようなことを聞かされます。
曲の歌詞を考えている真冬には、本当に好きな人がいた──。
それはおそらく、噂で聞いた自殺した相手のことでしょう。上ノ山は、ここではじめて、自分がその見たこともない、おそらくもうこの世にもいない相手に嫉妬していたことを自覚します。
そう……自覚したところで1巻目が終わります。
恋心を自覚するまでに1巻使えるのってとても贅沢ですよね……。これこそシリーズの醍醐味です。紹介文には「裸のオルタナティヴ・ラブ」と書いてありますが、彼らはまだシャツの1枚すら脱いでいません。これは、彼らの恋と成長が同時進行する、ド真ん中の青春BLです。
まだそういう意味では指一本触れあっていないのに、この先のことを想像するだけでわくわくと萌えが溢れてきます。買うときは、まとめて数巻購入することをお勧めいたします。
©キヅナツキ/新書館