2019.09.09

若き華道家の跡取り息子と、異国の次期国王が、似通った境遇に惹かれあっていくトリップラブ!『彼方此方で逢いましょう』久松エイト/雪林【おすすめ漫画】

『彼方此方で逢いましょう』

異世界トリップ系物語が大流行している今日この頃、BL界も例外ではありません。ある日、アトリエにある「鏡」が何故かどこかの王宮につながってしまった、という本作も広義のトリップものと言えるでしょう。

鏡にずぶずぶと身体が埋まり、向こう側は明らかに異国の王宮なのです……それは驚いて即引き返すのは当然です。そう、引き返せるんですこの鏡

大体の異世界トリップ系の物語は、片道一方通行で元の世界に戻るのは不可能だったり、戻れたとしても多大なる犠牲を払う必要があったりするのですが、この鏡はとても優秀で常に繋がりっぱなしでお互い行き来が自由です。

アトリエの鏡が異国の王宮に繋がっちゃった華道家の跡取り息子と、嫁選びを渋っている異国の次期国王。カップリングとしては、「異国のスパダリ王子 × 悩める和装美人」となります。

スパダリというより、ただの構って欲しがりのでっかい暴君のような気もしますが、他人の事情を気にかける必要のないお育ちなのである程度は仕方ないのでしょう。彼は彼なりに国の行く末や自分の王としての資質に悩んでいるのです。

さてクソ忙しい時期に謎の王子にしょっちゅうご訪問される羽目になった華道家の跡取り息子こと沙羅ですが、彼も自分は凡人で、代々続く華道の家元など務まらないのではないかと悩み続けていました。

規模は違えど似たような立場で似たようなことに悩む年頃の男子2人がいれば、惹かれあってしまうのも致し方ありません。若いので勢い余って意思疎通が十分でないまま身体を重ねてしまうことだってあるでしょう。その結果、仲たがいをしてしまうのもよくある話です。問題は、彼らの繋がりが、鏡1枚割れたら消えてしまう程度には儚いものだったという点です。

そう、勢い余って絶望のあまり、沙羅はふたりの唯一の繋がりである鏡を割ってしまったのです。もうアトリエと王宮は繋がれません。沙羅はぽっかり空いた胸の穴を埋めるように仕事に打ち込みます。

一方、王子様、鏡が割れてしまったので、今度は飛行機に乗って日本に乗り込んできました。

──そう。異国ではありましたが、実は異世界ではなかったようです。だからオビの紹介文がわざわざ”異世界”になっていたのですね……。

時空に隔てられていたはずの恋、実は飛行機レベルの遠距離恋愛でしたという壮大なオチがついていました。

いやいやいやいやいや!!!!? じゃあ君たち何語で意思疎通していたの? あの鏡はドラえもん的な未来道具だったの? と、異世界系のお約束が放り投げられた時点で脳内に疑問符が乱舞したのですが、最終的に2人が幸せになれたので良かったのかなと思います。

悩める和装の跡取り息子は儚げで素敵な受だし、お花を愛する異国の王子様も、暴君と思いきやけっこう良いヤツで、BL的にとても楽しく読めるし、切ないすれ違いに胸キュンするのは間違いありません。

しかしそれでも、ひとこと突っ込みは入れておきたい所存です。

なんでやねーん!!!!!

この記事を書いた人

アキミ

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