2019.10.05
何この可愛い生物!? 二足歩行でとてとて進むふしぎなネコとのキュートな毎日!『ふしぎねこのきゅーちゃん』にとりささみ【おすすめ漫画】
『ふしぎねこのきゅーちゃん』
「何この可愛い生物(いきもの)」という言葉がある。例えば誰か──おもにロリっ子キャラクターなどがキュートな言動をみせた時、我々の中にこみ上げる情動を反射的に漏らす言い回しだ。昔でいえば「萌え〜」とかそういうアレな、魂の叫びである。
そして、そんな「何この可愛い生物!」をそのまんま小動物キャラへ向けたくなる作品がこちら。マンガ配信Twitterアカウント「ツイ4」で連載中の『ふしぎねこのきゅーちゃん』である。
幕開けは冬。雪がしんしんと降りしきる、寒空の下の公園。ひとりの青年が捨てネコを見かけ、拾って家へ連れ帰ることにした。
「おいで」と一言かけると嬉しそうに走り寄ってきたそいつは、なんと二足歩行でとてとて進むふしぎなネコ!
「きゅーちゃん」と名付けられたネコはシンプルすぎる表情で何を考えているやらうかがい知れないが、ヒトの言葉が通じているらしくコミュニケーション能力はけっこう高度だ。
いろんなエサやおやつを並べて「好きなのえらんで」と言えば、サッと飼い主を指さす。
自分が美味しそうにものを食べていると飼い主がにっこり笑ってくれるので、おなかがパンパンになるまで食べてしまう。
日々の煩事に疲れた飼い主を屋根の上へ連れて行き、おひさまの光を浴びさせて元気づけようとする。
おでかけした飼い主が家に忘れた弁当箱を届けるため街へ飛び出し、人ごみをかいくぐって小さな大冒険を繰り広げる……。
などなど、きゅーちゃんの健気さとユーモラスさがほっこりとした癒しをもたらす光景のオンパレード。とにかく“微笑ましい”の一語に尽きる。
その感触の柱となっているのは、やはりマンガとしての絵柄それ自体だろう。
シンプルにしてスマート、それでいて柔らかな感触をたたえる描線は不思議なネコを作中世界で不思議なまま当たり前に存在させることを許し、その行動を素直に見守れるように仕立てている。飼い主の青年の朴訥とした佇まいもあいまって、単に静的なのではなく、ふところ深く穏やかな時間と空間に浸れるビジュアルになっているのだ。
いやあ、こういうタイプのマンガを読むと、文章でレビューすることのもどかしさを感じてしまいますね。
マンガはけっきょく視覚メディアなので、画を見てもらわないと始まらない部分ってのがどうしてもありまして……だからこそ、言葉であらわせないところを浮き彫りにするべく、言葉であらわせるところは力いっぱい言っておこう、という次第です。
というわけで言っておきます。きゅーちゃん……何この可愛い生物!
©にとりささみ/講談社