2019.10.09
性体験がない正義の味方の、33歳と28歳が恋をした『純情戦隊ヴァージニアス』福岡太朗【おすすめ漫画】
『純情戦隊ヴァージニアス』
性体験がない正義の味方の、33歳と28歳が恋をした
「純情戦隊ヴァージニアス メンバーに入る資格は性体験がないこと」
もうこの条件だけで一本取られた。話の軸になるのは33歳男子と28歳女子。恋愛経験のないアラサーを描く設定として、ここまで思い切ったものは珍しい。
純潔男女のみのヴァージニアス。33歳のレッドは最年長。みんなから微妙に気を使われている。戦うために恋を遠ざけてきた、情熱的で真面目なヒーローだ。けど童貞はコンプレックスらしい。
新しく加入したピンクは自称17歳の女子高生。でも実は28歳。奥手で恋を遠ざけていたため気づけばアラサー。彼女はレッドに親近感をいだき、気づけばその思いは恋愛へと変化していた。
ヴァージニアスという集団の構造がすでに、「恋愛に不慣れな人たち」しか出てこない前提条件。だからこの作品は「童貞処女の集団」と言う陰のオーラを自虐的に楽しむのではなくて、「性体験のない人達のピュアさがいかに素晴らしいか」を掘り下げている。
特筆すべきは、恋バナ大好きっ子の少女イエロー。ピンクとレッドの関係を見ていてツボでしょうがないらしい。ピンクが年齢を偽っているのも気づいているため、彼女の恋を刺激しまくる。いつもニヤニヤ顔だ。イエローがニヤついているところは、だいたい読者もニヤつきたくなるポイントになっている。
アラサーの恋愛は、リアルだと過去の恋愛遍歴や社会人としての仕事など、色々な要素が混ざってくるため、マンガ表現する際は無邪気に書くのが難しい。
しかし正義の味方だって言い切っちゃうなら、そのへんの事情は全部クリア。「女性との付き合い方がわからない男性」と、「奥手なままコンプレックスを持っている女性」のピュアな悩みと恋の芽生えを、シンプルに楽しめる。
私服のピンクがちょっと離れて日本酒を飲んでいた時、レッドが居酒屋で1人飲んでいるのを見つけて大慌てするシーンがある。未成年と言っていたのも何もかもバレる危うい場面。ところが彼女の脳もたいがいピンク。鉢合わせを「運命」なのかなと考えて赤面し、ドキドキしている。
ピンクがオフの日に温泉でのんびりしていたところ、レッドに出会ってしまうなんていうシーンも。アラサーあるあるの地雷をことごとく踏んでいくピンク(28)、どのコマを見ても純粋すぎて応援したくなるキャラだ。
出てくる大人たちは、敵も含めみんなピュアだ。世界がみんな純粋で奥手だったらどんなに幸せなんだろう、と感じてしまう癒やし力抜群の作品。
©福岡太朗/集英社