2019.11.17

いつもどこでも一緒のクマとたぬきの二匹が織りなす、スローライフ日常4コマ!『クマとたぬき』帆【おすすめ漫画】

『クマとたぬき』

本日は、「ピクシブエッセイ」で配信中の4コママンガ『クマとたぬき』をご紹介。Twitter上で発表され大人気を博したのちpixiv上で連載化、商業単行本も刊行中の作品だ。

とある森に、二匹のけものが寄り添って暮らしている。一匹は身体が大きく力持ち、けれど穏和なクマ。もう一匹は怖がりな反面、楽しいことや面白いものに積極的で好奇心旺盛なたぬき

性格も身体の大きさも習性も違う相手同士だけれど、クマとたぬきはいつもどこでも一緒のいいコンビ。ひなたぼっこをしたり、毛づくろいをしたり、ごっこ遊びに興じたり、時には他の動物たちとも交流しながら今日ものんびり生きていく……。

おおづかみに言えば動物キャラによるスローライフ日常4コママンガ、という形容になるだろうか。

ただし本作の動物たちは顔つきや言動にコミカルな擬人性を与えられつつも、シンプルな線のなかで骨格をしっかりとった造形や種ごとの生態がリアリティ高めに描かれており、牧歌的なほのぼの感を引き立てる形で「あくまで自然環境のなかに生きる動物である」という視点を組み入れ、温かくともベタつかない上品な感触を生んでいる。この塩梅がまず何より素晴らしい。

例えば第2話、クマとたぬきがきれいな虹をいっしょに眺める回を見てほしい。

ふたりが同じ景色を共有し、虹の色は七つだと聞いたことがある……と人間的な会話をするのだが、色を識別できる範囲が人間とは違うというリアルの生態を経由して、そのうえで色のもたらす気持ちに思いを馳せるという段取りになっている。

おかげでキャラクターが動物の皮をかぶった人間のようにならず、「あくまで動物」感がキープされている。本作のバランス感覚の秀逸さがよくあらわれた一編だ。

動物たちの会話セリフがフキダシを使っておらずコマ内余白への書き込みにしてあるのも、本作の動物たちと人間である読者の距離感をつかず離れずちょうどいい具合にしている材料といえるかもしれない。

また、視点という意味では第16話もいいサンプルになる。他のクマが森を横切る道路を突っ切って向かいの山へ移動しようとするのを止めるべくクマとたぬきが説得にかかるのだが、本来われわれ人間からみると「道に出てきたクマと遭遇したら恐い」という状況なのが、そこまで本作を読み進めてきた読者には「進行方向にヒトが勝手に作った道があるだけなのになあ」と動物サイドにまわり、人間を向こう側に置く体験をすることになる。

こういう、本来は彼岸のものである属性に肩入れを起こす現象が起きるのは動物キャラを見る時だけではない。

異なる心身・性・身分・文化・国・宗教などに属する「他人」であるキャラクター全般を相手に、自分ではないところへまわりこむシミュレーションを提供してもらえるのがフィクション作品にふれる甲斐のひとつではないだろうか。

それは、ひいては現実の対人関係にも働く想像力への刺激となるように思われる。

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miyamo

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