2019.11.18
過去の因縁を背景に繰り広げられるエロティック愛憎劇!『Rec me』端倉ジル【おすすめ漫画】
『Rec me』
肌色率高めのザ・BLで、そしてJUNE! な作品です。受攻そろって人気俳優。関係はセフレ。
「傲慢押さえつけ攻男・ユウスケ × 身体で惑わす妖艶誘い受・チヅル」という、お洋服の必要性がかなり低いカップリングとなっております。
貞操観念なにそれ美味しいの? という乱れたプライベート生活と、隙のない売れっ子俳優としてのお仕事モードを使い分ける彼ら。
ユウスケは、愛や恋で繋がっているわけではないと割り切りつつも、いつの間にかチヅルに執着して深入りしはじめてしまいます。私情を持ち込まないという暗黙のルールを踏み越えて職場でプライベートを覗かせるユウスケ。ヤキモチ焼いてるの? と容赦なく指摘するチヅル。
2人の関係が変わっていくか……というタイミングで判明していく彼らの過去。
そう、彼らは昔、同級生だったのです。しかも肉体関係がありました。ユウスケはそれに気付いていません。チヅルは知っていました。なりゆきで身体だけの関係だった当時、チヅルはひとりの教師に恋をしてユウスケから離れようとしたのに、ユウスケはそれを許さず無理やり身体を開かせます。
その直後、チヅルは好きだった教師に怪我を見られ、いたたまれない気持ちで逃げようとしたところで、追いかけてきた教師は事故に遭ってしまい──即死でした。
そう、チヅルは顔を変え芸名メインで生活し、別人としてユウスケに近づいていたのです。
晴れて復讐を果たすべく動いたチヅルは、望み通りユウスケを組み敷いて侮辱し、自分がされたような扱いをします。ようやく念願がかなう。そんな状況だというのに、チヅルは最後まで復讐者ではいられません。相手にセフレ以上の愛情を持ち始めていたのは、ユウスケだけではなかったのです。
まさに愛憎劇というべき展開です。憎いのに好き。復讐したい相手を、いつの間にか好きになっていた──。思い通りにならない歪な感情にふりまわされるチヅルは号泣します。
自分のせいで人が死んでいたと知らされたユウスケの動揺もなかなかです。彼らは過去と向き合いながら、これからの関係を再構築していくしかないのです。
ライトでエロティックで大人同士のスマートな恋かと思いきや、予想以上に重い過去が絡んだ愛憎劇でした。この重さ、JUNE的な色気と粘度を含んでいてなかなか食べ応えがあります。ちょっと気合を入れて楽しむ作品です。
©端倉ジル/祥伝社