2019.12.09

「無気力な遊び人 × 優等生」というカップリングで展開される、訳ありの幼馴染ものBL『ロッカバイディア』暮田マキネ【おすすめ漫画】

『ロッカバイディア』

意味が頭に浮かんでこないタイトル『Rock-a-Bye Dear ロッカバイディア』ですが、マザーグースの「Rock-a-Bye Baby」という童謡をもじった言葉とのこと。この歌は、木につるされたゆりかごの赤ちゃんが、風が吹くとゆれて、枝が折れたら落ちてしまうという、ちょっと子供に聞かせて大丈夫? というマザーグースならではのダークな歌詞となっています。

それをもじってつけられた本作が、ただの甘々な幼馴染ラブなはずがないんですよね……。結構訳ありの幼馴染ものBLです。

カップリングは、「無気力な遊び人 × 優等生」という感じでしょうか……。

受は幼い頃、実の母親から虐待を受けて保護された後、名前を「累」と変えて養子として育てられた子どもです。ちゃんと養親が誇れる息子でいないと、いつ捨てられてもおかしくないという恐怖を根底に抱えながら生きています。

その累の隣に住んでいる八尋は、養子という立場に引け目を感じている累に、自分にだけは遠慮せずに甘えてもいい、累が嫌がることは絶対にしない、できることは何でもやってやると言い聞かせて一緒に育ちます。

そのまま大きくなってお互い、どこか歪んだ関係のまま、いつしか身体を重ねるようになっていたふたりですが、ある日、義母に妊娠が発覚したことをきっかけに累の心は限界を突破してしまいました。いつ捨てられてもおかしくないと心のどこかで脅えて、そうならないように優等生でいるようにと自分に言い聞かせてきた累ですが、その恐怖がより身近なものとして迫ってくるように感じてしまったのです。

学業は優秀で当然で、人間関係もそつなく、やがてお嫁さんを連れてきて孫の顔を見せて……という絵にかいたような人生を、女性を愛せない累は歩むことができません。現に、身体の関係にあるのは幼馴染で同性の八尋です。

理想と現実のギャップ、幼い頃から抱えてきた恐怖、八尋のことが好きなのに理想を実現させるためには男同士の関係は受け入れられないこと。色んな事が累を押しつぶしてしまいます。

八尋と累が、現実の重みに潰れそうになりながらもがいて、手に入れた未来はどんなものなのか。切なくてはらはらしながら読みましたが、最終的には安心感に包まれた萌に出会えるかと思います。累は見ていて痛々しく、何とか守ってあげたい、幸せになってほしいと思わせてくれるキャラです。八尋の気持ちが良くわかります。

ぜひ、彼らが手に入れた結末を見届けていただきたいと思います。

この記事を書いた人

アキミ

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