『君に染まる町の色』

幼馴染ものです！！！！！ 同級生同士の、片側無自覚な両片思いというキュン死必至の萌設定。そして優等生受です。

組み合わせとしては、「明るいお馬鹿 × 優等生」という対照的な性格のカップリングです。幼馴染で中・高校生→進学＆社会人と続くなかで関係性が変化していくのです。

転校してきてすぐにクラスメイトとトラブルを起こしてしまった由之。気が強く、言われたら言い返すタイプでさらに意地を張る子供だった由之は、あっという間にクラスで孤立していじめの対象になってしまいます。そこに手を差し伸べてくれたのが千羽でした。

雨の日に靴を隠されて途方に暮れていたときに自分の靴を貸してくれようとしたのです。弱い者いじめは良くないと言われ、自分が弱い扱いされていると気付いて靴は断っていましたが、そこから彼らの関係はスタートしました。

由之は一方的にずーーーーーーっと千羽に片思いを続け、千羽はまっっっったくそれに気付かず、自分の気持ちにも気付かずに次々に彼女を作りながら由之のことは親友だと思っています。千羽が彼女を作るたびに、由之は歯を食いしばります。

やがて進路が分かれる高校生活の最後。

なんとなく一緒にいたい千羽は、由之が東京の大学に行くなら自分も東京に行こうかななどと言い出します。しかし、自分の気持ちにいい加減、ケリをつけたかった由之は千羽を突き放すようなきつい言葉でそれを阻止します。そのまま気まずい関係になりながらも、千羽が修行に出るタイミングで友達として仲直りができました。

由之はもう間違えない、友達としてこのままいい距離感で千羽と付き合っていくと心に誓いますが、彼が恋した明るいお馬鹿が相手ではもちろん、そんなことは不可能です。

常に深く考えずに直球の千羽に翻弄され、自分の好意を良い当てられ、完全否定したにもかかわらずあれよあれよといううちに本音を白状する羽目になってしまいます。一方の千羽も、幼馴染の親友のことを友達だと信じていたけど実は心の奥底では誰よりも大事に思っていて、歴代彼女よりも上に由之がいたということを自覚します。

中学時代から１０年近く。彼らの気持ちがようやく、正しく向かい合って報われることになります。

もうとにかく、由之の一途さと相手を思う気持ちが尊いです。千羽の憎めないストレートなお馬鹿加減も捨てがたく愛おしいです。ふたり揃ってこられたらもう、読みながら地面を転がって荒ぶる気持ちを鎮めるしかありません。なんと美しい幼馴染BLでしょう。心が洗われるようなキラキラした作品です。

©梅田みそ/新書館