2020.01.22
「ギクサーの姫」になってしまった純情少女が、憧れの男性に近づこうとする奮闘記!『ギークサークルクライシス 姫の恋路はバグだらけ』あおいくじら【おすすめ漫画】
『ギークサークルクライシス 姫の恋路はバグだらけ』
ポンコツギークサークルの姫の恋は純真すぎて叶わない
大多数の男性の中に、女性が1人。みんながその女子をちやほやすることで成り立つ人間関係……それが「オタサーの姫」。
マンガではどちらかというとネガティブに描かれることが多い。姫側の自己承認欲求が高まると歪な距離感になりがちで、一触即発でトラブルが起こりやすいシチュエーション。ドロドロした負の感情が渦巻いて、サークルクラッシャーの種となりかねない。
この作品もざっくりいうと、オタサーの姫マンガ。しかしヒロインの性格が幼く、サークルをいかにクラッシュさせないかのために必死で、欲望も含めて感情むき出し気味。コミカルな展開で安心して読めるコメディになっている。
白雪みなもはロリ体型のツインテール、プライドばっかり高くて友達が少ない女子大生。ぼっち生活を送っていた彼女、ある日サークル勧誘のちらしをまいていた男子生徒・花屋敷が、自分に好意を持っているのではないかと勘違い。彼のいる「電子創作同好会」に入部「してあげる」行動をとる。
男子だらけのそのサークルでは、他のオタク男子生徒にちやほやされはじめることに。元々は「オタサーの姫」が苦手だったみなもも、気づけば自分がそうなっていることに落胆するばかり。それでも同好会に居続けるのは、真面目にゲームを作り続けている花屋敷に、すっかり恋をしてしまったからだった。
なんとか花屋敷と仲良くなりたい。しかしオタサーの姫になっちゃった今、彼とくっつけばサークルの関係はバランスを失いクラッシュしかねない。サークルを大事にし創作活動に勤しむ花屋敷はそれを望んでいないはず。ではどうすればいいのか……恋に暴走しドツボにはまりつづけるみなもの苦労は続く。
みなもが極めて純真で、恋愛に関しては幼稚レベル。好感が持てるキャラクターだ。オタサーの姫化については達観して見ており、ちやほやされたいという願望もない。
花屋敷への恋は一途で、かつ奥手すぎる彼女。「純情少女が変テコな仲間の中で、憧れの男性に近づこうとする奮闘記」として仕上がっている。
比較的毒舌な彼女だが、それでいて花屋敷にちょっと褒められるとパニクるほどチョロいツンデレと化す。たまに戦略として先輩たちに媚びを売るものの、詰めが甘いためドツボにはまりがち。1人だけ酒で潰れるわ、無理やりコスプレさせられるわで、周囲のドタバタに巻き込まれては一人負けする様子も楽しい。
周囲のオタクたちもユニークなキャラ揃い。理系だけど脳筋なマッチョ、中途半端に一皮向けてイケメンぶる半陽キャ、みなもをモデルにエロ同人誌を描いてしまうぽっちゃりオタク。
みなもは3人の理解のし難さに全く太刀打ちできず、翻弄されるばかり。プライドが高いみなもをいい具合に混乱させてくれるキャラとしてみんなぶっ飛んっでいるので、見ていて不快感がない。
一方クールな花屋敷は、みなもが攻めこめないほどしっかりした人物な上に、要所要所で平静な顔でみなもを褒めてくるので、見ていてこっちまでキュンとしてしまう。それでいて女性には興味がない風に見える、直球なイケメン枠だ。
1巻後半から、みなもと花屋敷をめぐる関係が大きく動いていく。腹黒そうに見えて実は誰よりも純真なみなものへっぽこ恋愛奮闘記。オタクあるあるもしっかり交えつつ、ニヤニヤは加速度的に高くなっていくので、読む手が止まらなくなる作品だ。