2020.01.25
マジメ少女が不良少女にソフトな言葉責めで翻弄される、ガールズラブコメ!『飛野さんのバカ』筋肉☆太郎【おすすめ漫画】
『飛野さんのバカ』
本日は「GANMA!」で2017年から隔週配信のこちら、『飛野さんのバカ』という作品をご紹介。
とある学校の校舎、その奥まったところにある物置の裏。気の優しいクラス委員長・小熊ちゃんは、本来あまり縁のないその場所へ向かって毎日のようにとことこ駆けてゆく。
そこには、また本来なら委員長とは縁が薄いような一人の少女がいる。クラスメイトにしてサボりの常習犯・飛野さんだ。
授業を受けさせるため小熊ちゃんが飛野さんを呼びに行く、すると飛野さんはのらりくらりと矛先をかわしつつ、「授業に出るかわりに○○させてくれ」と要求してくる。それが「吸わせてくれ」やら「見せてくれ」やらどうにもエロく聞こえるお願いなので小熊ちゃんは大慌て。
お人よしすぎる委員長はドキドキしつつも、教室へ来てくれるなら……と応じようとするのだが、それはまぎらわしい言い方で勘違いさせるワナだったとオチがつく。小熊ちゃんは今日も見事に羞恥プレイのえじきとなり、顔を真っ赤にして叫ぶのだった。「飛野さんのバカ〜!」と。
てな具合に、マジメ少女が不良少女にソフトな言葉責めで翻弄される様子を描いたコメディになっている。なお勘違いオチとはいっても「吸わせてくれ」はオッパイではなく指のことでした〜(チュパチュパ)というレベルが平常運転なので、スキンシップはかなり濃厚。むしろフェチ度が高まって余計エロいね。
そして委員長と飛野さんの関係については、一方がやられっぱなしというわけでもないのが要点だ。
委員長の純朴さに飛野さんが心を和らげたりドキッとする瞬間がちょくちょく挟み込まれてバランスよく、からかいやイジりというよりは仲良しなじゃれ合いとして微笑ましく見られる。
公式の作品紹介文でも「ちょっぴりエッチな新感覚百合コメディ!」と謳っているので、心おきなく百合目線で読ませていただくことにしよう。ありがたや。
そんな本作で注目したいのは、飛野さんがサボりに使っている物置裏という場所そのものだ。
居眠りや飲み食い、ときに小熊ちゃんを巻き込んでちょっとした遊びの舞台となるその空間は、単なる逃避場所ではなく、まるでふたりの秘密基地のような風情である。
キャラクターの関係性というものは「誰と誰が」「いつ」「何をする」という流動的な要素だけでなく、「どこで」という基盤に支えられている。例えば文化系の部活もので美しく流れて過ぎ行く青春の日々は、たまり場としての部室という場所とセットになって登場人物や我々受け手の胸に刻まれる。時間と空間のかけ算が人の心を像に結ぶのだ。
薄暗く奥まった物置裏の位置は、人と距離を置きながらも侘しい不良少女の心のかたちでもある。何度も何度も“そこ”を目指して歩み寄って踏み込んでくる委員長の足音は、いつも優しく響いている。
©筋肉☆太郎/双葉社