2018.02.19
【日替わりレビュー:月曜日】『home』つゆきゆるこ
『home』
つゆきゆるこ先生の初BLコミックスです。
まずは表紙をご覧くださいこの……子犬(少年)が成長するさまを如実に表した素晴らしい図を!
見ただけで「あ、年下わんこ攻ですね」と理解できるわかりやすさです。
一軒家にひとりで暮らしながら小説を書いている辰巳は、睡眠薬を飲んでもなかなか眠れない睡眠障害持ち。寝れない分仕事が進むと、ネガティブなんだかポジティブなんだか判断に迷う微妙な思考回路を披露してくれます。
そんな日常の中、ある日、庭でひとりの男の子・澄晴に出会います。やんちゃな少年は、近所に引っ越してまわりを探検しているときに辰巳の庭に入りこんだのですが、そこから邪険にされてずっと構ってもらいに家までやってきます。まさに子犬。
その子犬ちゃんがいるときに、寝不足のあまり目眩で倒れてしまい、「寝るのが下手なんだ」と告白したところ……
「眠れないときは抱きしめてもらうといいんだ」
とのたまって、ちっちゃい身体でギュッと抱きついてくれるんですね。構図が完全に大人に甘える子供のはずなのに、漂ってくる雰囲気は完全に受を癒す攻そのものです。寝顔から大物感が溢れております。
もう完全に大型犬の子犬です。ふわふわの毛並みのゴールデンレトリバーです。
澄晴に抱きつかれていると不思議と眠れる辰巳ですが、この突然現れた少年は、また突然、親の都合で海外に引っ越してしまいます。そこで残した台詞が、
「大きくなったら絶対に帰ってくる。だからこの家で待ってて?」
ですよ。恋人かよ!? もう最高ですね。
別れ際に指切りまでしております。
ちなみに辰巳はこの時点で完全に落ちてます。
しかし、いざ澄晴が帰国してくるとなると日和ます。10年も待つと現実感が薄れるのと懐かしさが募りすぎてヤバい心理状態になったんだと想像しますが、なんとこの男、自分の心境をモデルに小説を書いて帰国前の思い人(だいぶ年下)に送りつけちゃうんですよね。
生涯消えない黒歴史になりかねない所業です。
孤独な男が子供に恋してそのあと失恋するような小説を、「絶対帰るから待ってて」と宣言した相手(当時から既に立派な大人の男)から送りつけられた澄晴の心情たるや……。これを正面から受け止めてちゃんと帰ってきた澄晴の器のサイズに感動せずにはおれません。
この再会までの経緯……さらっと描かれていますが、この後のハプニング――辰巳が澄晴の将来を思って男相手でいいのかと葛藤したり、澄晴の海外生活時代の彼女が家にやってきたり――より相当ビッグな山場だったのでは? という気持ちでいっぱいです。
キスもせず、もちろん色めいた告白もないまま十数年も離れて暮らして、普通に考えたらドン引きな、小説での公開告白を経ての再会&両想い&同棲生活です。すごくナチュラルに描写されていますが、冷静に考えてみるとなかなかのぶっ飛び展開です。濃いです。
澄晴の素敵な大型わんこぶりと、辰巳の、大人なのにちょっと捻くれつつも正直になろうとする可愛いところが最高な1冊でした。年下わんこ攻がツボな同志にはぜひ手に取っていただきたい作品です。
他に2編、なかなか個性的なカップルの短編も収録されており、濃厚なBL本となっておりますよー!!
©つゆきゆるこ/リブレ出版