2020.02.22

「わろてんか」で人気を博した登場人物・伊能栞を主人公に配したグルメ漫画!『伊能栞の明治大正洋食記』オイカワマコ【おすすめ漫画】

『伊能栞の明治大正洋食記』

2017年下半期にNHKで放送された「連続テレビ小説」第97作『わろてんか』。

吉本興業の創業者をモデルにしたヒロインが、大阪で寄席芸能の会社経営に奮闘する姿を明治・大正から昭和の二次大戦終戦直後まで三時代をつらぬいて描く繁盛記だが、そのなかで視聴者に強い印象を残す登場人物がいた。

名は、伊能栞

製薬会社の御曹司で映画(活動写真)の製作を夢に抱き、主人公・藤岡てんに対して長い年月をかけてビジネス上の厚い支援関係をむすぶ名サポート役の紳士だ。

主要人物が関西弁をしゃべる中でひとり標準語を話し、見た目よし・頭よし・家柄よし。会社社長である父が愛人に生ませた子という陰のある出自も含めて何もかもがドラマティックに出来上がった完璧超人で、そりゃあ人気が出ないわけがない。

今回ご紹介する『伊能栞の明治大正洋食記』はそんな伊能栞を主人公とし、ドラマの完結が近かった2018年2月から徳間書店のマンガサイト「WEBコミックぜにょん」で配信、現在はアプリ「マンガほっと」で読める全6話のコミカライズである。

NHK朝ドラマのマンガ化で、しかもサブキャラを主役に据えたスピンオフというだけでも珍しいが、さらに内容は栞の食べ歩きをつづったグルメマンガというジャンル色の強いものだから興味深さが増し増しだ。

マンガ版の舞台はドラマでいうと栞とてんの縁談が破談になったころの、明治後半。列強入りした日本はいやおうなしに近代化が進み、一般庶民の生活にも様々な洋風の要素が入ってきて激変する文化上の過渡期でもあった。

ドラマではお笑い興行と映画産業の進展を通してそれを描いたが、“食”における和洋混交もたしかに当時を描く強い切り口だ。

まだ普段着に着物をまとう人々が多く、交通には鉄道網が定着した一方で人力車も残るご時勢、真っ白い洋装を身にまとったスマートな日本人紳士が町角の食堂で洋食を口にする……。

劇中に出てくる食べ物はオムレツ・コロッケ(ミートクロケット)・ライスカレーといった、現在では身近すぎる食べ物たちだ。それが、この時代・この人物を通して新鮮かつ品格あるメニューとして我々の目に飛び込んでくることで、あらためて一種の引き締まった感覚を得ることができる。

なるほど、グルメマンガという形は昨今の流行りだけで選ばれたのではなく、たいへんに必然性が深いものになっているわけだ。

それにしても、アレですな……。この美青年ジェントルマンを設定どおりにマンガに描き起こそうと思ったら演出レベルでキラキラ感と華麗さをだいぶ盛り盛りに載せる必要があるあたり、それを生身の演技で体現してのけた高橋一生さんすげーなー、と思えて仕方ありませんわ。ねえ。

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miyamo

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