2020.03.04
ゲーム実況を通じて描かれる、パパと娘の絆にほっこり!『パパと巨乳JKとゲーム実況』糸吉了一【おすすめ漫画】
『パパと巨乳JKとゲーム実況』
パパと娘の幸せゲーム実況ライフ(ただしパパは巨乳JK)
ゲーム実況は今や娯楽の一つとして定着した。ゲーム機に最初から実況配信の機能がついているくらいだ。世界の誰か知らない人に、面白くプレイ見せるのは立派な表現活動。この作品はゲーム実況を通じて描かれるパパと娘の絆のお話。
リストラで仕事を失った50歳のパパ・篠宮憲一。かねてよりゲーム実況をしていた娘のリサは、彼が一日中家にいるのを見かねて、一緒に配信をするよう誘う。
リサは男声の「サトリ」としてボイスチェンジャーで配信しており、登録者数20万人の人気実況者。一方でパパは女声の「南」にボイチェン。
パパが南としてプレイした動画が、意外なことに大バズり。ボイチェンによる萌え声、古臭い喋り方、たどたどしい操作がハマったらしい。あっというまにサトリ(リサ)の人気を追い越してしまう。
それどころか、想像による女子高生・南のファンアートがアップされるほどに。かくしてサトリと南(リサとパパ)は、2人でゲーム実況配信に本腰を入れ始める。
タイトルの巨乳JKとは、リサのことではない。パパが演じる南(をファンが勝手に妄想したもの)の方だ。このあたりがリアルと切り離されたネットの面白さ。
南のファンが作った、アニメーションする南の2Dモデルを見た時は、さすがにパパも自分がドジっ子巨乳JKになっていたとは思わず、赤面。
いわばVTuberみたいなもの。パパとリサがこのファンのイメージをどう受け入れて、自分たちの実況に生かしていくかは、今後の見どころになりそうだ。
パパとリサの仲は、めちゃくちゃにいい。
ちょっと古めかしくて真面目で優しいパパと、お年頃なりに大人びつつもパパっ子なリサ、2人の仲の良さを見ているだけでも幸せになれる。パパが本当に初心者で一生懸命取り組んでおり、リサはそれをニコニコして見ながらサポート。実況プレイ中の2人は元気に満ち溢れ、イキイキしている。
リサ側は幼い頃おパパさんのことが大好きだったけれども、学校の友だちの影響で距離を置かなきゃと戸惑っていたらしい。
「ゲーム実況を一緒にする」という名目があることで、2人でいられる時間がしっかり取れるようになった。パパのそばで心から楽しそうにしているリサの姿を見ていると、彼女が両親にいかに愛されているかがよくわかる。
幼い頃に父親を亡くし、仕事ではリストラを受け入れ、苦労を重ねてきたパパ。「今リサと一緒にゲームがやれて楽しいからいいんだよ」と微笑む姿は、嘘偽りなく幸せそうだ。そんなパパの姿を見て、リサの顔もまたキラキラしている。幸福のループだ。
2人を微笑ましく見ている母親も含め、ゲームが家族の絆を育んでいるのは間違いない。
ただそれを「実況」という形で作品として残しているからこそ、2人は目的を持って打ち込めているのがポイントだろう。2人の実況が人を引きつけるのは、もしかしたら、2人の幸福感がネットを通した向こう側に、伝わっているからかもしれない。
©糸吉了一/KADOKAWA