2020.04.03
可愛いのはロボットだけにあらず!ご隠居のキュートな反応も必見!『ご隠居コレクション』祀木円【おすすめ漫画】
『ご隠居コレクション』
祀木円先生の『ご隠居コレクション』が発売されました。
祀木円先生と言えば、『しゅんにゃん』に『トウキョウ・D』と、着ぐるみの愛らしいロボットが登場する作品というイメージですけれども、今回もそっくりそのままでございます。あのかわいい着ぐるみ、登場しますとも。
祀木円専売特許とも言うべきこのセラピーロボット、かれこれもう10年ぐらいこれ一本でやってるのではないでしょうか。すごい。というかこっちはこっちで「またか……」と思いつつも、その愛らしさに結局読んじゃうんだから悔しい。今回も可愛かったですとも。
老人とロボット
物語の主人公は表紙にもいるご隠居。とある会社の元社長で、今は役員をやって悠々自適。年齢も年齢なので、終活として身の回りのモノを整理し始めています。そんな彼に、セラピーロボットを制作している会社・TAMYの社員をしている友人が、半ば押し付けるように最新版のロボットをプレゼントしたことから、この物語は始まります。
ロボットに全く興味のなかったご隠居でしたが、ぺーという名前を付け、一緒に暮らすうちにだんだんと愛着が湧いてきて……という日常物語です。
セラピーロボットは猫型と言いつつ、人間の子供が着ぐるみを着たような見た目をしていて、実際に会話することも出来るし、ちょっとした身の回りのお世話や食事もすることができます。
ただ、いわゆる介助ロボットではなくセラピーロボットなので、家のお手伝いといったことは専門外で、得意ではありません。基本的にはペットのように、自由気ままに行動をして、ご主人を癒すというのがお仕事になります。
コレクションがもたらすドラマ
タイトルから、ご隠居をコレクションするのかと思ったらそうじゃなかったです。話の軸となるのは、ご隠居がこれまでコレクションしてきたものをめぐるストーリー。ご隠居のコレクションでした。良かった。
終活のために身辺整理をしていると言いましたが、倉庫の整理をしていると、記憶になかったアレコレや、懐かしい品物が出てきたりするのです。その品物にまつわる記憶を紐解いていくと、その品物の裏に隠された思わぬ事実が明らかになったり、またぺーに与えたりすると喜んでくれたりと、変わり映えのない日常にちょっとしたドラマや感動が生まれていきます。
たとえばレコードが出てきて、ぺーに聞かせると喜ぶので、以来レコードをかけるのが日課になったりとか、そういう変化が微笑ましい。
可愛いのはロボットだけにあらず
セラピーロボットが可愛いのは当たり前なんですけれども、『しゅんにゃん』しかり、セラピーロボットに相対する人間たちの反応だったりが可愛らしいんですよね。
本作の場合は、なんともサバサバした性格の元社長ということで、可愛らしいことに無縁そうな属性の持ち主なのですが、日々を共に過ごすうちに、なんだかぺーのことが気がかりになったり、ぺーのために何かしてあげようと行動したりといった面がどんどん増えていって、その光景がもう可愛らしい。
孫ってわけでもなく、ペットってわけでもなく、その中間のような絶妙な存在なんですよね、セラピーロボット。
しゅんにゃんが始まったころはAIBOはもうブームが去っていたでしょうか。まだペッパー君も登場していないような時代でしたが、確実にテクノロジーは進化していて、ファンタジーだったこの世界が、着実に近づいている実感があります。
今でこそ癒し系SFの領域ですが、もう少ししたら、本当にこういう世界が訪れるかもしれませんね。癒しと共に、この世界にもう少しで手が届きそうという、静かなる高揚感も感じているのは私だけでしょうか。
ともあれ今回も、否定も悪意も一切無い、極上の癒しの世界が広がっておりました。暗い話題が多い最近ですが、たまにはこんな作品を読んで、心を休めてはどうでしょうか?