2020.04.04

縦ロール髪のお嬢様×陰キャ男子の勘違いラブコメディ!『北条うららの恋愛小説お書きなさい!』 ナカノ,ザワ【おすすめ漫画】

『北条うららの恋愛小説お書きなさい!』

いきなりだが、まずは『釣りバカ日誌』を思い浮かべてみてほしい。

お気楽なヒラ社員ハマちゃんと、辣腕な社長スーさん。立場に大きな格差があるコンビが釣りという趣味を通じて友情を結び、プライベートな場ではヒラ社員のほうが遊びの師匠として大きく出ることができる、逆転的な関係性。庶民視点からなんとも夢のある人間ドラマだ。

ふたりの人物をメインキャラとする作品で、身分ギャップをただ一点の共通項によりひっくり返す趣向……いわば“釣りバカメソッド”とでも呼べるそれは、エンタメ作品において非常に有効な基本形である。シリアスもギャグも問わず、またリアルもファンタジーもSFも男性向けも女性向けも問わず、例をみることができる。

さて、そんな前置きをふまえて、今回ご紹介するのがこちら。「ヤングエースUP」で配信中のWebマンガ『北条うららの恋愛小説お書きなさい!』だ。

本作のハマちゃん相当は、とある高校に通う地味で普通な少年・野上くん。ネット小説投稿サイトに短編をアップするのを趣味としつつ、クラスではいわゆる陰キャのカーストに身を置いている。

そんな彼が、絵にかいたような金持ちお嬢様の縦ロール髪少女北条さんに目をつけられた。

彼女は野上くんがネットに小説を投稿していることを知っており、ペンネームまでも特定しているという。

「私が言いたいのは そういうことですわ おわかりいただけたかしら」

不敵に笑う北条さんに、ビビり上がる野上くん。そういうことってどういうことだ!? ……そうか! 脅しにきたんだな!? もしも小説を書いてることをクラスのみんなにバラされたら馬鹿にされて笑いものになってしまう! 秘密を守ってもらう代わりにいったい何を要求されるんだろう!?

……ところが一方の北条さん、言動は高飛車お嬢様ムーブすぎるが、実は野上くんが恐れるような裏は何もない

彼女は野上くんの書いた小説を読むのがただ好きで好きでたまらない熱烈なファンであり、野上くんに声をかけたのも純粋に愛読者としてあいさつしたかっただけ。心の中では野上くんを「先生」と呼んで敬愛に燃える、何とも可愛らしいひとなのである。つまり彼女は“釣りバカメソッド”におけるスーさん相当なのだ!

やがて、北条さんから恋愛小説を書いてほしいとリクエストされた野上くんはプレッシャーに潰されそうになりながら書き始めるが、なかなかうまくいかない。だって恋愛経験ゼロだもの!

すると、野上くんに資料を提供しようとする流れで北条さんが暴走。自分と付き合えば実体験が得られるからと、彼氏彼女になることを宣言してくる。

かくして、脅されていると誤解したまま苦手なジャンルに挑戦する羽目になった小説書きの少年と、意図をうまく伝えられないまま推し作家へのファン熱をたぎらせるヘッポコお嬢様、お互いに混乱しながら少しずつ距離をつめていく恋人関係(のような何か)がワチャワチャと展開していくのだった……!

本作がすれ違いラブコメとして親しみやすいのは、北条さんがうっかり言葉や態度を間違って野上くんに誤解を与えた後、毎回かならず屋敷で反省パートに入るからだろう。

とくに、そのパートで容赦ないツッコミ役を果たすメイドさんがいいキャラをしており、

「このままだとお嬢様 失礼な奴だと思われて嫌われるっスよ」

などなど、野上くんに対してやらかしたことがどんな意味を持つのかガツンと言ってきかす図で、北条さんに禊(みそぎ)がおこなわれ、読者のヘイトが溜まらないようになっているのが上手い。

秘密をタテにして野上くんを家へ呼びつけた北条さんに学校での言動を再現させつつ鏡をすっと出して己のふるまいをつきつけ、「うわあああ脅しにしか見えませんわああああ」と悶えさせる第6話第4回の冒頭が秀逸なコントで思わず吹いてしまった。

言動ミスからくる無自覚ツンデレと、そのあとの反省芸。二重に可愛いお嬢様キャラの魅力に、野上少年も早く気付いてほしいものだ。

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miyamo

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