『See you later,Mermaid』

※いつも以上にネタバレしているのでお気を付けください。

幼い頃から言葉で人を操ることができた辰実は、旅先のある海辺で一人の青年・一士と出会います。同じ宿に泊まっていたふたりは、部屋で一緒に酒を飲み、酔いもあって一気に距離が縮むのですが、その翌日、一士に連絡先を交換したいといわれて辰実が断ると、軽い言い合いになります。

それで、です。
「本当にここでお別れなのか 俺にどうしてほしいか ちゃんと言え」
という一士の発言からの、

辰実：「俺のことを……好きになってほしい」
一士：「愛してるよ」

です。

いやいや君たち昨日出会ったばかりじゃなかったんですか！？？？？ 1番寝たら酔いも醒めますよね！？ と、読んでる側は大混乱です。伏線あったっけ？ と冒頭まで戻りましたもの（なかった）。

そこから、過去にさかのぼって徐々に種明かしがされていきます。ミステリ仕立てのBLなんですよ。旅先の行きずりの恋からの本気恋愛かと思っていたのでびっくりしました。

実は彼ら、初対面なんかでは全然なくて、それどころか幼馴染なんです。ずっと親友として育って、途中からどうも親友に対する気持ちでもなくなっていて、でも辰実は自分の能力を一士に使ってしまうのを極度に恐れていて……恐れるあまり、距離を置こうとして、能力を使って自分のことを忘れさせてしまうのです。

一方の一士はというと、なんと忘れていませんでした。忘れていないのに忘れた体で、初対面として旅先で辰実に声をかけたのです。

忘れさせたと信じていた辰実と、忘れたふりをしていた一士が、お互い初対面を演じていたのが冒頭の出会いの真相だったのです。ややこしい設定ですが、お互いに好きすぎて相手に憶病になる男同士の話は最高に萌えます。

つまりこのBLは、ミステリ仕立ての、幼馴染同士の再会ラブものなんです。切なくて可愛くて、お互いが相手を大事に思うピュアな気持ちに殺伐とした心が浄化されます。

答えがわかってから再読すると細かいところにキュンキュンできるので、立て続けに2回読むことをお勧めします。

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