2020.04.08
厳しい口調の先輩は、ちょっと不器用でとっても優しい『不器用な先輩。』工藤マコト【おすすめ漫画】
『不器用な先輩。』
厳しい口調の先輩は、ちょっと不器用でとっても優しい
27歳、ちょっときつめな女性の先輩。でも実は不器用。はい、ここでハートに来た先輩属性の人は即買おう! 「見たい」と思うであろうシーンはほぼ全部見られて、ニヤニヤゲージがパンクする事間違いなし。表紙の持つイメージが完璧なので、ジャケ買い大推奨。
かなりきつめな性格で、視線が厳しい鉄輪先輩(かんなわ)。22歳の新入社員の亀川(かめがわ)の教育係で、周囲の人から怖がられている。
確かに生真面目で、融通が利かないおかたい人なのは間違いない。仕事に対しても真摯で、口調が強いのでちょっと厳しく見える。しかし実は彼女、コミュニケーションが下手なだけ。
亀川のことを大切な後輩だと思っており、先輩としてなんとか優しく接して色々教えてあげたいと考えている。ただ不器用なので、どうしても空回りしそうになる。
周囲の社員は鉄輪を怖い人間だと思っているようだ。しかし亀川はちゃんと鉄輪の優しさがわかっている。先輩・後輩の関係はすこぶる良好だ。
鉄輪の表のきびしい顔と、裏のへたれた顔のギャップがどこをとってもかわいらしい。しかも慌てると思わず方言が出てしまう。平常時は先輩であろうとして、標準語で常に背伸びをしているのだとわかると、キリッとした彼女の顔すらもキュートに見えてくる。
後輩と仲よくするためのメモを事前に作ったり、亀川がわからないところがないかとじーっと見つめ続けたり、お昼を先輩らしくおごろうと強引に誘ったり。よき先輩たろうとする度に、彼女は自分のコミュ障と戦い、顔を真っ赤にしながら亀川に向き合う。一歩ずつ頑張って寄り添おうとしてくれる鉄輪の姿は、ところどころ幼い少女のようでありつつも、確実に頼れる大人にも進歩している。
亀川が非常に気の利く鋭い人間なのも、作品としてポイントが高い。鉄輪は確かに不器用ではあるが、間違いなく自分のことを考えて助けようとしてくれている。そこを察して彼女をそっと、困らせないように立ててあげる亀川。フォローの仕方がスマートだ。
それでもやはり新人なのは間違いない。本当に困ったとき、鉄輪がしっかりと助け舟を出してくれる。彼女のコミュ障も、亀川のことを思って助けるためなら吹っ飛ぶようだ。その姿を見ているからこそ、亀川の鉄輪への信頼感はどんどん高まっていく。これは亀川が社員として、鉄輪が先輩として成長する、2人の成長物語だ。
鉄輪の衣装は注目ポイント。毎回違った服を着ているおしゃれな彼女、職場で27歳女子がどのような服を着るのがベストなのか、それでいてちゃんときれいでありたいとしているのがよくわかる。
肌を出しすぎないように気を使ったり、基本パンツルックだったり、スカートの丈が長かったり、夏場にスカートの下にレギンスを履いていたりと、細かい衣装描写に彼女の性格がよく出ている。それでいて亀川のぶかぶかなスーツを着てはしゃいだり、ゲームの話で早口になったりと、時々素が出る。作中に頻発する彼女の慌てた赤面を見て、4月からの新年度を頑張ろう。
©工藤マコト/スクウェア・エニックス