2020.04.18
スコップ一本の力で道を切り開く、地上最強の鉱夫の冒険ファンタジー!『スコップ無双「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ』福原蓮士, つちせ八十八【おすすめ漫画】
『スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ』
本日ご紹介するのは、小説投稿サイト「小説家になろう」での連載から商業書籍化して色んな意味で注目を集めた小説のコミカライズ。KADOKAWA「ドラドラしゃーぷ#」で配信中のWebマンガ『スコップ無双 「スコップ波動砲!」( `・ω・´)♂〓〓〓〓★(゜Д ゜ ;;;).:∴ドゴォォ』である。なんちゅうタイトルや。
主人公・アランの職業は、鉱夫だ。洞窟の地下深くに潜ってひたすら宝石を掘る人生を送ってきた、筋金入りのベテラン鉱夫である。
いや、ベテランという形容ではまだ足りない。ドワーフ族の血が入っているらしく長寿な彼は、じつに1000年もの間スコップを振るい続け、山を掘り続けてきたのだ。
掘って掘って掘りまくり、まず100年経ったころ。彼が手にするスコップの技術は一段進化した。単にスコップの本体で掘るだけでなく、先端からビームが発射されてさらに強力に掘れるようになったのだ。
「……なんと スコップはビーム兵器だったのか」
だったのか、で納得する器の大きさよ。
そこからさらに現在へ至る1000年間、スコップビーム式採掘はパワーアップを続け、波動砲と呼べるレベルにまで極まった。溜めたエネルギーを一気に放てばドラゴンも倒せるし、大きな山を一発で吹き飛ばすこともできる。これがスコップの力だ!
もはや「スコップで掘る」という行為は抽象的な概念となり、石や土といった物体はもちろん、ついには空間をも「掘る」対象へと拡げていく。
空間を掘ればそこに穴が開く。穴は遠く離れたこちらとあちらの場所を行き来する超空間トンネルとなる……スコップ式瞬間移動法、「鉱夫空間跳躍(スコポート)」の誕生である。
かくして「スコップ」「掘る」の拡大解釈で出来ることが何でもできる地上最強の鉱夫アランが久しぶりに外界へ出れば、あとはもうタイトル通りに無双の始まり。
彼が外で最初に出くわしたのは、多額の賞金をかけられ悪漢に追われる姫君・リティシア。邪悪な存在のせいで乗っ取られた国を救うべく奔走している彼女の姿に“宝石のように”純粋な心の美しさを見出したアランは、救国の旅に力を貸すこととなる。
戦えばまず近接攻撃にスコップ、遠距離攻撃にもスコップ、防御にスコップ、必殺技にスコップ、どんな状況でもスコップ、スコップ……とすべてをスコップで解決するアランと、アランの活躍を目の当たりにしてスコップに魅了された挙句“スコップ教”を奉じる狂信者になり果てるリティシア姫。
いかなるツッコミも寄せ付けないコンビの奇行は独特の勢いで作品を満たし、われわれ読者もやがてはアランのスコップ技が巻き起こす超常現象の数々に「だってスコップだからな……!」と目玉ぐるぐるでうなずくことになるのだ。
さて、世にある様々な分野における技芸は、いわゆる名人・達人の存在によってセンス・オブ・ワンダーな逸話を形作り、我々の心をおどらせる。
例えば古代中国の伝承に出てくる武芸の達人。春秋戦国時代のとある将軍は弓の腕前があまりにも凄すぎて、弓の弦を張って矢をはなつ準備を始めただけで動物がビビって泣き叫ぶなんてエピソードを残している(詳しくは「猿号擁柱」でググってみよう)。今でいえばチャック・ノリス伝説(架空)やイチロー伝説(架空)みたいなものだろうか。
『スコップ無双』もまたそういう「一事を極めた達人」の冒険譚という意味では、実は奇をてらっているというよりむしろ古式ゆかしい趣を備えているとも言え……言える、かなあ……!?
なお、原作小説の作者・つちせ八十八先生といえばかのライトノベル『ざるそば(かわいい)』を書いた作家さんである。そう考えると本作のノリにもある種のなるほど感を得られよう。
©福原蓮士,つちせ八十八/KADOKAWA