2020.05.06

恋のライバルかと思いきや、ライバルの矢印は自分に向いていて…!?ドタバタ百合コメディ!『少女漫画主人公×ライバルさん』くゥ【おすすめ漫画】

『少女漫画主人公×ライバルさん』

才色兼備な美人ライバルが冴えないヒロインに詰め寄る理由

マンガに欠かせない、ライバル役。少女漫画の場合それは大抵、恋を邪魔してくる、自分より美貌や才能がすぐれた人物だ。テンプレで考えると、いじめたりきつい言葉を投げたり圧力をかけたりと、なんらかのストレスの要因になればさらにライバル度アップ。

でもそんな子たちだって、なんらかの理由があって動いているはず。もしそれが悪意じゃなくて好意だったら…? という逆転の発想で描かれる、ドタバタ百合コメディがこの作品。

いつもおとなしくて内気な、特に目立つところのない普通の少女・木村ほのか。彼女はイケメンの男子生徒・水嶋蒼(みずしま・あおい)のことが好き。しかし水嶋の近くにはいつも、明るく強気な女子の檜山由莉奈(ひやま・ゆりな)がいる。

「木村あんたさぁ なに水嶋に色目使ってるわけ?」
「遠くからいっつも水嶋のことチラチラ見てくるし やたら近くでちょろちょろしてさぁ 本当あんたウザイ」

言葉が荒いため、いつもビクビクしてしまう木村。しかし檜山はぐいぐいと木村に詰め寄る。これでもかと詰め寄る。

「私の気持ちには応えてくれないくせに!!」「私の方が絶対あんたのこと幸せにできるわよ!! 私を選びなさいよ!!」

檜山の木村への猛烈アプローチが続く日々。「それは困る」と木村は回避する度に、檜山の頬は涙に濡れる。

ライバルと見せかけて実は大好きなのはヒロインの方、という逆転ネタをあの手この手で多様に見せてくれるオムニバスコメディ。

檜山はみんなが噂する美人で、どんなものでも余裕でこなせる、はつらつとした大いに目立つ才女。きれいな見た目と立ち振舞で、少女漫画のライバルってこういうのだよね、と一発で思わせるキャラデザインに仕上がっているのが見事だ。

ライバルといえば、苛立ったときのくずれた美人。檜山も妬み顔は完璧…と見せかけて、そここそが「大好きな木村に向けて送っていた熱い視線のつもり」で通じていない、というポンコツっぷり。

例えば他にも、パーフェクトだから木村のために超おいしいお弁当を作ることができる彼女だが、ポンコツだから一緒に毎日お弁当を食べようってきちんと言えず恐喝まがいになってしまう。ずれた完璧さがどうにも愛おしいキャラだ。

朝学校にきたらヒロインの机の上が…とか、教室の黒板にヒロインの名前が大きく書いてあり…とか、いわゆる少女漫画内のいじめで使われるお約束ネタを、全部ハッピーな檜山のへたくそな愛の表現に変えているのが、非常に清々しい。

とはいえ水嶋への恋路を檜山が邪魔する結果になっているのは事実。作品自体は檜山のめちゃくちゃな恋愛が中心に描かれているゆえに、檜山に報われて欲しい気持ちがどうしてもわいてしまう。

しかし現時点では木村の気持ちは、当然ながら向きそうにない。告白自体はしているので、せめてお友達からスタートできれば……。水嶋少年も含め出てくるメインキャラはいい子だらけなので、全員が報われて欲しくなる。

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