2020.05.13
同人女子とふたなり天使のワクワクラブホ探検!『趣味のラブホテル』らぱ☆【おすすめ漫画】
『趣味のラブホテル』
同人女子とふたなり天使のワクワクラブホ探検
「ラブホテル」と言われて回転ベッドを思い出す人はちょっと古い認定される昨今。確かに最近は「洒落たホテル」くらいのものが増えてきており、かつてのド派手なものは減ってきた。
けれども回転! すけすけガラス! よくわからない乗り物! みたいなワンダーランド感ラブホテルはまだまだ存在している。各地の変わったユニークなラブホテルを楽しんで回るオムニバス形式の作品だ。
22歳の同人作家の女性、待合茶耶(まちあい・さや)。彼女は自分の漫画でリアルなラブホテル描写をしたいと願い、取材を試みていた。しかし一人でラブホテルに入るのはハードルが高すぎる。そこで話しかけてきたのは、一人の美人。
「それじゃあ一緒に行きます?」という言葉に釣られて、2人はラブホテルの中に入る。
そこに広がっていたのは、でかでかと置かれたオープンカー型のベッド。部屋の天井には青空。壁にはハイウェイ。あまりにも非現実的な空間に、茶耶は大興奮で写真を撮りまくる。
楽しそうにはしゃぐ茶耶の横に、一緒に入った女性が寄り添う。ここはラブホ、ナンパに乗ったと慣ればそういうことをして当然。性体験のない茶耶は驚いて彼女を突き放す。
せめて一緒にお風呂に……と裸になった時、その女性に陰茎が生えていることに気づく。彼女は全ての男女に愛を伝えるべく派遣された、ふたなり美少女天使・カシオペアだった。
茶耶とカシオペアは「性的な付き合いはしない」という暗黙の了解の上で、おもしろラブホテル巡りを始める。登場する場所は全て実在のもの。
世界地図があったり、宇宙モチーフだったり、調理施設がついていたり。バブル期に作られたダイナミックすぎるびっくり部屋から、ラブホ女子会などで使えてインスタ映えするおしゃれな部屋まで、多様なラブホテル描写が楽しめる。気になる人はどこのホテルか、ネットで調べてみよう。
茶耶が性体験なしの同人作家で、カシオペアが男女両方に対応できる愛の天使、というキャラの対比が、ラブホテルへの視点を大きく分けている。
茶耶はラブホテルに入る時、そこに投影するのは「推しカプのまぐわいの舞台」というファンタジーだ。一方カシオペアは愛を平等に与えてきたため、ラブホテルは「性の快楽を与える実践の場所」だ。
カシオペアとしては、茶耶とセックスができるのならしたい。でも愛の天使だから、いやがることはできない。茶耶はラブホテルめぐりが楽しいからカシオペアとつるむようになったので、カシオペアが無理やり押し倒してくるなんて夢にも思っていない。
思考が一致していない2人が一緒にラブホテル巡りできているのは、信頼関係が育ちつつあるからだ。カシオペアが過去に誰かとラブホテルめぐりをしていた話をすると、そりゃそうだと理解しつつも茶耶はモヤモヤとしてしまう。
茶耶は自分の中に生まれた嫉妬を決して言わないものの、カシオペアは気づいてつげる。
「もう茶耶ちゃんとしか来ませんよ」
心の距離の変化だ。
ラブホテルは身体を重ねて愛を育む場所。しかし旅行スポットとして、2人で面白いこと楽しいことを体験する場所で、デートスポットの一環だ。2人は身体を重ねることはしないけど、共にいる時間が増えるほどにどんどん信頼感が強まり、距離が近づいていく。それも立派な愛の行程。ラブホは「こうするべき」というルールがある場所ではない。
ラブホに入るときの役に立つ基礎知識や不倫事情など、多様なネタが2人の会話の話題に盛り込まれている。2人の物語としても、ラブホおもしろ話としても楽しい作品だ。
©らぱ☆/新潮社