2020.05.16
イタズラっ気の強いギャルJKと色恋沙汰に縁のない真面目男子の、形勢逆転学園コメディ!『乱したい戯谷さんと乱れないタダミチ』菅原優太郎【おすすめ漫画】
『乱したい戯谷さんと乱れないタダミチ』
本日は、講談社のマンガアプリ「マガジンポケット」で配信中の『乱したい戯谷さんと乱れないタダミチ』という学園コメディを紹介したい。
イタズラっ気の強いギャルJKと色恋沙汰に縁のない真面目男子の組み合わせ……とくれば、てっきり「ははーん、さては女の子がからかい上手で、ウブな男の子を毎回アタフタさせるマンガかな」と思いそうになるが、さにあらず。
たしかに本作のヒロイン・戯谷(ぎや)さんは毎回エロい格好や思わせぶりな言動でひとりの男の子をイジってやろうと企む小悪魔系ではある。
だが、ターゲットとなる風紀委員・タダミチくんというのがなんとも手ごわい人物なのだ。
大胆に開いた制服のボタンを留めるよう注意された戯谷さんが「どうしてもって言うんなら……タダミチが直してよ」と胸を突き出してみせれば、タダミチくんは「分かりました」と真顔で即答。ずいっと迫って服に手をかけてくる。
体調不良のため保健室でベッドに入りながら「温めてほしいんだけど」と挑発すれば、ためらいなく「これでいいですか?」とギューっとハグする。
制服の下に着こんだ水着をセルフスカートめくりで見せつけて「ドキドキした〜?」と訊いてみれば「趣味趣向は自由なのですが屋外での露出はマズいなと」なんて露出狂あつかい……。
という具合に、ギャルのからかいは毎度毎度、真面目すぎて逆にバカな男の子の鋼鉄メンタルによって完全無効化。翻弄しようとしたほうがふりまわされるカウンターの連続となっていく。タダミチくんは乱れない!
もしも他作品の男の子キャラが相手なら、戯谷さんがまったく同じキャラでもからかいがうまくいってるだろうになあ……と不憫になるところだが、まさにそこが本作の要点といえる。
これはどんなジャンルでもいえるが、俗に“キャラ属性”と言われるものの多くは、じつはそのキャラ単体の設定以上に、そのキャラに対して他のどんなキャラが組み合わされるかが重要だ。例えば妹キャラを設定するのは兄キャラをどう造形するのかとセットになる、というように。
そこを、本作はイジりキャラに対してイジられキャラをぴったりマッチさせるのではなく、あえてイジりが通じない相手を壁にすることで文法崩しの可笑しみをうまく演出している。
こうした“崩し”が成り立つのは、つまりそれくらい、スタンダードな型としてのからかいラブコメ作品が豊かに発展した背景があるということだろう。
©菅原優太郎/講談社