2020.06.06
公園の樹々や草花に細やかに、かつ具体的にピントを合わせてくれる散策エッセイ!『公園植物ワンダーランド』 花福こざる【おすすめ漫画】
『公園植物ワンダーランド』
本日は、イースト・プレスのWebメディア「マトグロッソ」で配信中のエッセイマンガを紹介したい。
公園。とても身近で、絵面をイメージしやすいその存在。
広場があり、遊具があり、砂場があり、ベンチがあり。利用目的は遊び、運動、休憩、行楽、はたまた幼児連れの親御さんの社交場……公園とはどういうものかと訊かれれば簡単に答えられる人がほとんどだろう。
みんな、公園が何かは知っている。けれど一方、公園を構成する要素について「積極的に詳しく知る」機会というのは少ないのもまた事実。
『公園植物ワンダーランド』はそんな日常感覚の隙間をついて、公園の樹々や草花──われわれがただ「緑」とざっくり認識して流してしまいがちな部分へ細やかに、かつ具体的にピントを合わせてくれる散策レポートになっている。
洗足池公園・新宿御苑・小石川植物園・等々力渓谷・あしかがフラワーパークなどなど、単行本では11箇所プラス書下ろし1箇所の計12の公園が紹介され、まずそもそも公園の種類からしてバリエーション豊かであることを再確認させられる。
そのうえで、あそこに生えている花はこういう時期に咲いてこういう性質があるとか、この樹木には歴史的に有名なこういうエピソードが……と興味深いウンチクの目白押し。
すっきりした線による絵柄で描かれるさまざまな自然物のスケッチは分かりやすい注釈を伴って情報力が多く、あたかも良質なガイドブック、なんならちょっとした図鑑めいた様相をていしている。読み応えたっぷりだ。
作者の花福ござる先生は夫婦でお花屋さんを営みながら人気ブログ「花福日記」を運営し、『花福日記 お花屋さんの春夏秋冬』『花福ねこ日記』など職業柄を活かした親しみやすいエッセイマンガを描く兼業マンガ家であり、このマンガにも本職の視点が随所に活かされている。花について解説するさい、学術的な情報だけでなく一般的な人気のあるなしも言い添えるとかね。
なお情報量が多いといっても、けっして堅苦しい教科書的な内容ではないのがいいところ。
池をスワンボートで渡ってはしゃいだり、史跡観光や動物ウォッチなども熱心におこない、“公園って一年中こんなに遊べる、楽しめる!”とテンション高まる姿を前面に押し出すさまはたいへんに微笑ましい。そう、とにかく公園のなかで何をしていても楽しそうなのである。
植物の豆知識だけでなく、公園というもの全体についても、知っているようで知らなかった面白みを伝えてくれるこのマンガ。
例えば美味しそうな料理を描いたグルメマンガを読むとつられてそれを食べたくなるように、本作を読めば思わず近所の公園へ出かけたくなる確率大だ。
今はまだご時勢的にどうしても外出を控えたい人、控えざるをえない人もいると思うが、状況がもっと落ち着いたら……と思いを馳せつつ読んでいただきたい。
©花福こざる/イースト・プレス