2020.06.12

会社員に降りかかるさまざまな問題を凸凹コンビが解決していく、人事部ドラマ!『人事のカラスは手に負えない』大谷紀子【おすすめ漫画】

『人事のカラスは手に負えない』

ちょっと前になりますが、大谷紀子先生の新作『人事のカラスは手に負えない』の第1巻が発売されました。

出版社における校閲部(『校閲ガール』)であったり、市役所の納税課(『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』)であったり、一般企業の経理部(『これは経費で落ちません!』)であったり、地味めな部署がフィーチャーされることも多くなってきた中、満を持して人事部の登場ですよ。

ちなみに過去に人事部を扱った作品があったのか気になったので、ちょっとcomicspaceで「人事」で検索してみたんですけど、一応有名どころでは『人事課長鬼塚』ってマンガがあり、22巻も出てます。本作とは読者層全く被らなそうですが、そちらもぜひ。

さて、のっけから脱線してしまいましたので、戻しましょう。物語の舞台となるのは、業界5位の飲料メーカーの人事部。そこで働く28歳、6年目の布田潤のもとに、念願の後輩がやってきます。その名は烏山千歳・25歳。

声がとにかく小さく、何を考えているのかよくわからない、なんとも風変りな彼女に不安を覚える布田でしたが、この迷コンビが次々に降りかかる問題を華麗に(?)解決していきます。

人事の問題ってなんなのって話ですが、1巻で扱われるのは副業禁止規定と、パワーハラスメント。まぁどこの会社にもよくあるやつだと思います。かくいう私も勤め人であり、このライター活動はグレーなんですけれども、ということもあってめっちゃ真剣に読みましたとも。

人事部が扱う事項は「これ」と明確に決められているわけではなく、社員に関わることであれば、何かと人事に回ってくることは多いようです。問題の内容は多岐に渡るのですが、実際に切れるカードはそう多くはなく、現場に介入して改善を促すか、場合によっては人事規定で罰則を与えたり、異動というカードを切ったりもします。

ただそれは最終的な手段であって、それだけやっていると物語にはなりません。本作は、メイン2人の凸凹コンビがその問題に深く首を突っ込み、根底にある問題を浮き彫りにしていくと共に、最適な解決策を模索していくのですが、そのプロセスが一つの見どころとなります。

タイトルにある手に負えないカラスとは、後輩である烏山のこと。

最初は先輩らしく布田が主導して問題解決に挑んでいくのですが、問題も白黒ハッキリしているものは無く、その多くがグレーで扱いが難しいんですよね。たとえば副業禁止規定の問題も、「利益を得ていないから問題ない」という当人の主張がある一方で、「副業を優先しているため本業がおろそかになっている」という同僚の声も多数あるなど、規則に照らし合わせると問題ないけど、確実に問題はあるという。

そこで頭を悩ませる布田に対して、突如として烏山がこれ以上ないというような解決策をぶっ放すのです。実は烏山はただの社員というわけではなく、何やらすごいバックグラウンドがあることを匂わしているのですが、そこは徐々に明かされていくのでしょう。

烏山が繰り出す手はあまりに完璧で、正直見ていても「いち社員がやれるレベルじゃないなぁ」という感じがあり、ある種のファンタジーに近い印象がありました。またコンビと言いつつも解決するのは烏山ばかりで布田の貢献はちょびっと。人事の泥臭い問題を、若手たちが頑張って解決して成長していく……というストーリーかと思っていたのですが、実はそうではなさそう。

というわけで「人事」という仕事をメインテーマに据えたお仕事ものとしての魅力には乏しいのですが、一方で特異なキャラクターを推し出したストーリーは単純に面白い。

また物語が進むごとに、烏山の正体が明らかになっていったり、布田の成長が見られたり、ともすれば2人の恋愛なんてところもワンチャンありそうで、色々な方向への広がりが期待できそうです。勤め人も、そうでない人も、どちらも楽しめる間口の広いつくりになっているとも捉えることができ、幅広い人に読んでもらいたい一作ですね。

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